これをご紹介しないとフェアではないので、記事にいたします。「MSCI指数で韓国が新興国(Emerging Market)と分類されており、なんとか先進国(Developed Market)に入るべくドアバタしている件」です。
例の洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官が「ワシが討って出る」と直交渉も辞さない構えで注力しているわけですが、洪長官や韓国の皆さんが喜ぶようなリポートが出ました。
2022年02月13日、『ゴールドマン・サックス』が「Asia-Pacific portfolio strategy report」を出しましたが、その中で韓国の先進国市場分類について、早ければ2024年にも可能なのではないかと述べました。
これは、先にご紹介したとおり、2022年06月に申請して、1年間の観察対象国となり、その1年後に分類変更が行われたとして……という最短コースでいけた場合を想定してのことです。
同リポートによれば、「韓国市場が先進国市場に分類された場合、400億ドルが流入する可能性があり、ディスカウント率を30%にすることができれば、KOSPIは現在よりも35%高い3,760まで上がるかもしれない。また2年後にこれが起こって、収益が年10%成長するならKOSPIは4,500に達する可能性がある」としています。
まあトラタヌな話なのですが、しかし先進国市場に分類されるためには、MSCIが問題視している課題をクリアしないといけないのです。
リポートが主な問題と指摘しているのは、以下です。
a) no offshore trading of the Korean won;
韓国ウォンのオフショア取引がないb) lack of English information disclosure and concerns over corporate governance;
b) 英語による情報開示がなく、コーポレートガバナンスに懸念があるc) complex identification-related regulations for foreign investors;
c) 外国人投資家の本人確認に関する規制が複雑d) lack of omnibus trading accounts and limited ability to carry out in-kind transfers;
d) オムニバス取引口座がなく振替に制限があるe) partial restrictions on short-selling.
e) 空売りが一部制限されている
「オムニバス口座」というのがなんのことか分からないかもしれません。
「オムニバス口座」というのは、さまざまなファンド、複数の関係者を代表する口座のこと。
「omnibus(オムニバス)」は、もともと「乗り合いバス」の意味です。
海外の投資家は自国の銀行あるいは外国の有力銀行に証券の管理を委託しますが、この委託された銀行は投資先国の金融機関に口座を開いて証券類の管理を委託します。
この際、投資家1人に対して1口座にしてもいいのですが、管理の手間が増え煩雑になって面倒です。そこで、複数の投資家で1口座としてその中で売買によって生じる証券管理を行うようにするのです。これがオムニバス口座です。配当の受け渡しは、投資先国の金融機関から自国銀行あるいは外国の有力銀行に渡り、そこから投資家にいきます。
で、このオムニバス口座が開設できないため、韓国市場は面倒くさいし、現物株式の振替に制限があって「先進国市場ではない」と問題にしているのです。
筆者などは「コーポレートガバナンスに懸念がある」という点が面白いと感じます。これをクリアするのは大変に難しいと思われますが……。
さて、韓国の先進国への挑戦が報われるかどうかご期待ください。
(吉田ハンチング@dcp)