「ワロス曲線」とは、「韓国の通貨当局が通貨防衛のために為替介入を行い※1、その結果として現れる『極端な上昇・下降を繰り返すチャートパターン』のこと」です。
チャート上に下降「\」しては、上昇「/」するというパターンを繰り返すため、「\/\/」が続き、あたかもネット上で「笑」を意味する「W」が並んで見えるためこのような名称で呼ばれるようになりました。
「ワロス曲線」が一般にも注目されるようになったのは、2008年のリーマンショックの際に、韓国の通貨当局が為替介入を行い、通貨防衛を行ったときのチャートが基になっているようです※2。
誰が命名したのか、誰が最初にワロス曲線という異常な値動きをみんなに紹介したのかは残念ながら分かりません。慧眼の持ち主であり、ユーモアのセンスにあふれた人だったのでしょう。
「何者か」の介入を示唆する異常なチャートパターン
「ワロス曲線」とされるのは例えば以下のようなチャートパターンです(チャートは『Investing.com』より引用:以下同)。これは2019年05月14日18時24分ごろから始まった攻防です。
ウォン安方向へと上昇する赤いローソク足と、ウォン高方向へと下降する緑のローソク足が入り乱れて、ある一定の為替水準を守ろうとしているのが見てとれます。しかも、このローソク足は不自然なほど長いですね。
これは1分足ですから、1分間にこれだけの価格変動があったことを意味しています。つまり、この上から下(あるいは逆に下から上)へと、大きな価格変動を起こすために「大量の資金が一瞬に投入された」わけです。
これをもう少し長いレンジで見てみると以下のようになります。
ローソク足の上限がある価格帯でピタリと停まっているのがお分かりいただけるでしょうか。つまり、この場合は「1ドル=1,187.80ウオン」を超えさせたくない「何者か」が大量の資金を使って防衛しているとしか見えません。そうでなければこのような不自然なチャートにはならないと考えられます。
2021年09月に現れた「ワロス曲線」(推定)
韓国通貨当局が本当に為替介入しているかどうかは、本人に告白してもらうしかないのですが、ワロス曲線が出現すると「すわ為替介入か!」とネット上では話題になります。
2021年10月にはドルウォンのレートが一時「1ドル=1,200ウォン」に達し、韓国メディアも騒然となりました。この「1ドル=1,200ウォン」は、韓国通貨当局にとっては心理的な抵抗線です。
この前段階の09月17日、ウォン安が進行する中、「ワロス曲線」と推測できるものが出現しました。以下をご覧ください。
↑2021年09月17日は開場スグからウォン安方向に進行していたのですが、09時30分ごろから極端に上下するローソク足が現れるようになり、これが15時ごろまで続きました(赤丸で囲った部分)。
上掲は、2021年09月17日10:55現在の1分足のチャートです。
この日の場合、「1ドル=1,176ウォン」近辺までは下げたかった(ウォン高にしたい)ようで、きれいにラインがそろっています。
09月17日はウォン安圧力が強く、例えば①のポイントは09:50ですが、1分足3本で約3ウォンも下げたのに、次の09:51のド頭②では平気でまた3ウォンも値が戻る(ウォン安方向へ一瞬で飛ぶ)という具合でした。
どうしてもウォン安を進行させたくなかった何者かの介入の証と見ることが可能です。
なぜ「ワロス曲線」は大笑いなのか?
このような通貨防衛を行っているのは韓国通貨当局、「韓国銀行」としか思えないため、ネット上ではこのようなワロス曲線が出ると「『韓銀砲』炸裂」などと揶揄されます。
なぜワロス曲線が笑われるのかといえば、その介入があまりにも露骨で分かりやすいからです。
上記の例でいえば「1ドル=1,187.80ウオン」になると必ず大量のウォン買いが入ってそれ以上上昇しない(ウォン安方向には行かない)ことが、誰の目にも明らかですね。つまり、ワロス曲線が現れると誰でも簡単に儲けることができるはずです。
考えてもみてください、相場で儲けるのが難しいのは価格変動が予想できないからなのに、ワロス曲線では買い・売りのポイントが誰にでも分かるのです。
これは通貨防衛を行っている「何者か」のやり方が「まずい」、ハッキリ言えば「ヘタ」なせいです。「ある価格までくると一気に大量の資金を投入する」ため、防衛ラインが明確になってしまうのです。
また、大量の資金を投じて通貨防衛しているはずなのに、その後あっさりその壁を突破されるとしばらく放置しているといったことが見られ、これもおかしな点です。これは通貨防衛を行っている「何者か」の資金量によるものと推測されます。
あくまでも推測ですが、その日あるいはその時間に投下できる資金の総量があらかじめ決まっているのではないでしょうか? それで突破されたら仕方がないと放置してしまうわけです。
このような幾つもの理にかなわないおかしな点によって、ワロス曲線はその名のとおり笑いの対象となっているのです。
※1
当局の介入が真実かどうかは分かりません。あくまでも推定です。
※2
より正確には「ワロス曲線」は、2005年に起こった韓国の通貨当局による「ウォン高」阻止のための介入が基になっています。韓国は輸出一本でもっている国であるため、ウォン高に触れると輸出産業が立ちゆかなくなるために「ウォン安」にしておく必要がある――という認識だったのです。
そのため2005年当時の「ワロス曲線」は、ドルウォンチャートが「\」とウォン高に進むと、韓国の通貨当局(と思われる「何者か」)がチャート上「/」とウォン安方向へ介入し、これによって「\/\/」を繰り返す、「W」が連続して出現するチャートパターンとなったのです。
しかし2008年以降は通貨当局は「ウォン安阻止」で介入していると推測され、チャートパターンは「/\/\」ですから、厳密にいえばこれをワロス曲線と呼ぶのはヘンではあるのです。しかしネット上ではこれもワロス曲線と呼ばれることが多く、そのためこの説明でも「韓国の通貨当局が通貨防衛のために為替介入を行い、その結果として現れる『極端な上昇・下降を繰り返すチャートパターン』のこと」としています。
なぜ「通貨安」の方が都合が良いはずの韓国の通貨当局が「ウォン安阻止」を行っているかについては別記事にてご紹介するようにいたします。
追記
※2を追記しました。
※2にチャートの説明図を追加しました。
(柏ケミカル@dcp)