尹錫悦(ユン・ソギョル)政権発足間近となり、尹さんの公約を守るためでしょうが、外交部長官(外務大臣に相当)に指名された朴振(パク・ジン)さんが国会人事聴聞会で非常に興味深い発言をしました。
韓国メディア『中央日報(日本語版)』の記事から発言部分を引用します。
「(THAAD)3不は文在寅(ムン・ジェイン)政権でも約束でも合意でもないといった。韓国の立場を説明したもので、これを撤回するしないという問題ではないと考える」。
次期外交部長官に指名されている朴振(パク・チン)氏は国会外交統一委員会の人事聴聞会で「THAAD3不」に対しこのように話した。
朴氏の言葉のように、3不は拘束力のある約束や合意ではないという論理は文在寅政権が主張してきた通りだ。
THAADと関連し、屈辱的合意という世論の批判を避けるために考案した文在寅政権の「盾」が尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「矛」になる理由だ。
(後略)
最後の矛と盾の話はなにを言っているのかよく分からないので無視します。
朴振(パク・ジン)さんは、国会聴聞会において「(外務部長官として)三不の誓いを撤回するのか」という旨の質問に対して、「撤回するも何も三不の誓いは中国との約束でも合意でもない。だから撤回するも何もない」と述べたのですが、これは逃げです。
「自分がどうするのか」については何も言っていません。はぐらかした卑怯な回答だといえます。
文政権では時の外交部長官だった康京和(カン・ギョンファ)さんが突如として表明し、それが定着してしまいました。
三不の誓いは、韓国の安全保障上の主権を放棄したに等しいものですから、メディアはじめ識者から攻撃されたのですが、文政権は「約束や合意ではない。あくまでも韓国政府の立場表明だ」と言い繕ってきました。
①アメリカのミサイル防衛に参加しない
②日・米・韓の安保協力を軍事同盟化しない
③THAADの追加配備をしない
この答弁で分かったのは朴振(パク・ジン)さんもこれを継承するという姿勢であり、尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが選挙期間中に示した「THAAD追加配備」という言葉からは後退するものです。
『中央日報(日本語版)』の同記事には以下の様な興味深い点があります。
(前略)
いずれにせよ10月31日の発表文案や康長官の発言でもわかるように、韓国政府が一貫して使った表現は「立場」だった。約束や合意はもちろん、原則でもなかった。もちろんその後中国が3不を約束のように扱ったりこじつけるのが問題だった。
(後略)
『中央日報(日本語版)』は、三不の誓いは約束や合意、原則ではない、中国がこれを約束のように扱うのが問題だ――などと書いています。
だから「韓国は立場を変えてもいい」といわんばかりです。
噴飯物の主張だといえます。
「相手がどう考えているのか」という視点が決定的に欠けています。韓国の政治家、識者、メディアは往々にして相対的に物事を見ることができません。今回の記事もその一例といえます。
韓国が「約束や合意、原則ではない」と考えていても、中国は「約束であり、合意であり、原則だ」と考えていますから、「立場なので変更し得る」などと言えば、中国からすれば「完璧な約束破り」です。
「今更ナニを言ってるんだ。オレからすれば約束だ。一度した約束は守れよスネ夫」とジャイアンは言うでしょう。
これは中国相手の話ではありますが、中国に対して約束を守らないのであれば、当然日本に対しても同様のことをするでしょう。
つまり、韓国という国は「あれは立場表明だから」などと言を左右にして約束を守らないのです。
『中央日報(日本語版)』は、自分で書いていて気付かないのでしょうか。この記事は「韓国は約束を守る国ではない」と韓国メディアが喧伝しているのに等しい――ということに。
(吉田ハンチング@dcp)