先に韓国のメディアにもよく登場する「後頭部を殴られた」という表現について、田中明先生の指摘をご紹介しました。
より直截に「なぜ裏切られたと思うのか」について田中先生が言及された記述があるので、追加でご紹介しておきます。
以下です。
華夷的世界観の属性の一つとして、その対外意識が「義ハ君臣、情ハ父子」という言葉に見られるように、道徳主義的情緒主義に偏しやすいということがあげられよう。
そこでの国際関係は、同一平面上でさまざまな国が合理的な利害打算にもとづいて付き離れるものとは解されない。
情誼によって結び合い、憎しみによって争うという形でとらえられるのである。
たとえば解放後のアメリカは「恩人」であり、朝鮮戦争を共に戦った「血盟」の間柄として意識される。
韓国では「友邦」という言葉がよく使われるが、それは単なる同盟国というよりは、ハートで結びついているべき国というニュアンスを強く帯びている。
そのため、相手にかける期待が大きく、相手が期待に反する行動に出た時の怒りや挫折感が深刻になりやすい。
国民意識とは、自分たちは他国民とは違うという対外意識とともに成長するものであることを思えば、他者との間に距離をおかないこうした心理は、前進的な国民意識の形成にはマイナスとなろう。
むしろ韓国民を対外依存的な心性にしばりつける要因になるものである。
韓国の反政府系人士によく見られることだが、アメリカや日本に韓国政府へ圧力をかけることを望み、それによって政治目的を遂げようとする行動様式などは、その例である。
⇒参照・引用元:『韓国の民族意識と伝統』著:田中明,岩波書店,2003年09月17日 第1刷発行,pp42-43
日本から朝鮮半島南部の統治を引き継ぎ、初代李承晩(イ・スンマン)大統領を擁立したのはアメリカ合衆国です。合衆国は現在の韓国の生みの親といっても間違いではありません。
その意味では「恩人」です。
また、朝鮮戦争で北朝鮮を退けたのは合衆国軍です。韓国は合衆国のことを「血盟」と呼びますが、その割には反米運動も根強く、「合衆国に後頭部を殴られた」と言い出します。
なぜ、そんなことになるのかは、上掲の田中明先生の解説がそのまま回答です。
韓国は、血盟だから「ハートで結びついているべき国」であり、「合理的な利害打算にもとづいて付いたり離れたりしてはならない」と考えているのです。
国際関係を妥協し合って、お互いに譲り、お互いに利益を収めるとは考えないのです。
「なぜ韓国の言うことをきかないのだ。お前はうちの者じゃないか」と情誼で判断しています。
田中先生の指摘どおり、だからこそ「相手にかける期待が大きく、相手が期待に反する行動に出た時の怒りや挫折感が深刻になりやすい」のです。
それを「後頭部を殴られた」と表現していると考えられます。
まったく度し難い話です。
(吉田ハンチング@dcp)