日本ではあまり報道されていないようですが、韓国『サムスン電子』の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の動きが注目されています。
李在鎔(イ・ジェヨン)さんが、『ソフトバンクグループ』の孫正義総帥が接触の機会を持とうとしています。韓国メディア)は、『サムスン電子』が、『ソフトバンクグループ』から『ARM(アーム)』を買収するのではないか――と見ているのです。
読者の皆さんもご存知のとおり、中国企業の業績が悪化し、株価が低迷する中、『ソフトバンクグループ』の業績も傾いています。
これ以上中国企業には期待も依存もできませんので、保有している『ARM』はまさに虎の子といえます。
『ソフトバンクグループ』は、そもそも合衆国のグラフィックチップ・ボードメーカー『NVIDIA(エヌビデア)』に『ARM』を売却するつもりで、いったんは契約が締結されたのですが、結合審査で却下され、ご破算となりました。
2022年02月08日には以下のように、「売却できないので上場して資金を手に入れるもんね」というプレスリリースを出しています。
NVIDIAおよびソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)は、NVIDIAがSBGからArm Limited(以下「Arm」)の株式を取得する契約を解消したことをお知らせします。
両社は、取引完了のために誠意を持って取り組んできましたが、これを阻む規制上の大きな課題があったため、契約の解消に至りました。
Armはこれに代わり株式上場の準備に入ることとします。
(後略)
孫さんからすれば「玉が要るんや、玉が」という現況ですが、『サムスン電子』が「買いましょう」と言ったら売るだろうか?――なのです。
2022年09月23日、『ソウル経済』には
李在鎔(イ・ジェヨン)『サムスン電子』副会長が、イギリス半導体設計業者(ファブレス)『ARM』に対する買収合併(M&A)の可能性を示唆した中、交渉対象の孫正義(日本名孫正義)『ソフトバンク』会長が取引推進の事実を直ちに肯定した。
財界では、『サムスン電子』がインテル・クアルコムはもちろん、『SKグループ』とも合従連衡式協力を推進するという観測が出ている。
(後略)
同記事によると、10月には孫正義総帥が訪韓し、李在鎔(イ・ジェヨン)総帥とミーティングを行う予定――となっています。
総帥同士の「ボス交」(韓国のエライ人は大好き)というわけです。
主要な問題は以下の2つです。
2.『サムスン電子』は買収するに足るお金を持っているのか?
『ARM』を韓国企業『サムスン電子』が買収することを合衆国が許可するか?――は大きな問題、かつ見ものです。中国との半導体戦争の中、韓国企業を信じられるのかという質問に突き当たりそうだからです。
これには単にお金ではなく、政治判断が関わってくるでしょう。
そのため『ソウル経済』の記事では(具体的に何を意味するのか不明ながら)他メーカーとの「合従連衡的協力が……」と書いているのだと思われます。
「2」は金額がいくらになるかです。『NVIDIA』が『ARM』を買収に乗り出したとき、すでに金額は「600億ドル」という水準にまで釣り上がりました。
現在では、『ARM』の価値はさらに上がっているものと思われます。
上掲の『ソウル経済』の記事では、『サムスン電子』の現金性資産の大部分を投じないと買えないと書いています。
ただ、希代の錬金術師といわれる孫さんならば、『サムスン電子』が買収できるプランを考え出すでしょう。
つまるところ、どのように結合審査をクリアすればいいのかで政治的な術策が必要になりそうです。
孫正義さんの動きにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)