米韓ワシントン宣言が効いたと見えて、中国の韓国批判が激しくなっています。尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領を貶める勢いも強まっています。
もちろん、中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』の記事もアドバルーンを盛んに上げています。なかなかいいアドバルーン記事が出ましたので、ご紹介せざるを得ません。
以下に記事の一部を引用します。
韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、ワシントン宣言を今回の訪米の最大の成果として捉えている、あるいは認識しているようだ。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、ワシントン宣言を「前例のない」アメリカ合衆国のコミットメントと熱っぽく表現した。
ワシントン宣言は、バイデン米大統領との会談後に発表されたもので、核協議グループ(NCG)の新設と、合衆国の核弾道ミサイル潜水艦が40年以上ぶりに韓国を訪れるという2つの内容が柱となっている。
北朝鮮に対する「拡大抑止力」を強化するためといわれている。
つまり、尹氏はアメリカから「核の傘」を取り戻したいのである。
しかし、今回の訪米で彼が持参したさまざまなプレゼントや韓国の利益に対するコストと比較すると、この「核の傘」は非現実的であり、新たなリスクをもたらすだけと思われる。
韓国国内への成果報告にはならないばかりか、朝鮮半島の新たな緊張に火をつける可能性が高い。
(中略)
一部の合衆国メディアは、今回の宣言を、合衆国が韓国の核武装を思いとどまらせるための「イチジクの葉」(恥ずかしさを隠すために使う)と表現しているが、韓国への悪影響は明らかにそれ以上である。
“外交的成果 “とか “尹政権の勝利 “と呼ぶのは皮肉に満ちている。
前例のない核保有へのコミットメントを得たと言うより、前例のない自主性を失ったことは明らかである。
(中略)
共同声明とはいうものの、韓国は単なる署名者に過ぎない。
共同声明は、いわゆる「経済的強制力」について曖昧に語り、改めて “台湾海峡の平和と安定 “について言及した。
このような共同声明に署名することは、中国との相互信頼を害することになる。
(中略)
以前は「4大国との外交関係」を謳っていた韓国だが、今では完全に合衆国一辺倒となり、バランスを崩し、自らをも失うことは必至だ。
(中略)
アメリカの『ニューズウィーク』誌は、ユン氏の訪米中に「今こそ東アジアのNATOを」という記事を掲載し、合衆国、日本、韓国、中国の台湾地域との民主的価値観に基づくいわゆる「経済NATO」を主張しているが、これは合衆国が韓国を「支配」していると見ている者が行う悪質でずるい提案である。
韓国が合衆国への依存を強めているのは、合衆国が握った脆弱性である。
韓国の歴史上、最も対米自立心が低いのは尹政権ではないかとの指摘もあるが、今回の訪米は、その評価を裏付けるものであることは間違いない。
⇒参照・引用元:『Global Times』「Yoon’s visit to the US verifies an evaluation: Global Times Editorial」
合衆国と韓国の共同宣言を「イチジクの葉」と称するのは、言い得て妙かもしれません。
先に合衆国ホワイトハウスのファクトシートの全文をご紹介しましたが、一読すれば分かるとおり、韓国メディアが喧伝するような「核の共同保有」などではありません。
また「NATO並の核シェアリング」からもほど遠いものです。かすってもいません。
実質は、韓国尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の核保有への熱意に根負けした合衆国が「協議体」を作っただけ――というだけです。
合衆国は朝鮮半島から核を全廃するのが目的でこれは譲れない戦略目標です。北朝鮮だけでなく、韓国に核保有を許すことはないし、シェアリングもあり得ません。
しかし、韓国の要求を全ツッパすると尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の国内受けが悪くなります。いわば、協議体の設置は、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領へのお土産、そう考えた方がいいのです。
ただ、一応バイデン大統領は「北朝鮮が核を使用したら、合衆国が核による反撃を行う」と首脳会談前に明確に述べてくれました。あとはオマケと考えるべきでしょう。
はっきりいえば、原子力潜水艦の韓国派遣もセレモニーです。居所を隠して、地球の裏側からでも北朝鮮を狙える原潜が、なぜわざわざ「ここに行きます」などという行動を取らなければならないのでしょうか。
記事の最後にある「韓国の歴史上、最も対米自立心が低いのは尹政権ではないか」という指摘は、韓国を挑発するものですが、こんなのは「逆から見れば」……であって、いかようにも語れます。
文在寅政権は韓国史上もっとも対北朝鮮自立心が低いのではないか
朴槿恵(パク・クネ)政権は韓国史上もっとも対中国自立心が低いのではないか
だって成立するでしょう。
要は程度の問題であって、現在韓国につきつけられている「合衆国と中国、どっちを取るの?」という詰問に対して、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は「合衆国の方がマシ」としているだけです。
中国は自分の属国であった朝鮮の南半分が合衆国側に立つことが気に入らないに過ぎません。
「以前は『4大国との外交関係』を謳っていた韓国だが、今では完全に合衆国一辺倒……」と恨み言のようなことを述べているのは傑作です。
「効いている」ということです。
一方で、韓国は中国側に「習近平総書記の訪韓」要請を行っています。ワザとやっているのなら大したものです。
中国側からすれば「おまえら……どの面下げてそんな要求を……」と青筋を立てるような話ですので。
韓国「習近平さんに訪韓してほしいんです」
中国「……だめに決まってるだろ!」
韓国「えっ? なぜですか?」
中国「えっ?」
※中国外交部の定例ブリーフィングはメイデーの05月01日から03日までお休みです。05月04日(木)から再開されます。その間は御用新聞が外交部の代わりに外国への反論・余計なお世話な説教などを行うでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)