アメリカ合衆国と中国の貿易戦争が激しさを増し、高関税の科し合いとなりました。
中国に対しては最高税率245%となっており、これはもはや利益がどうこうといったレベルではありません。出荷するのも無駄――という税率です。
なぜ245%になったかというと、これは複数の措置が積み上がった結果です。
フェンタニル対応追加関税:20%
相互関税:125%
計:245%
このような輸出するのも無駄という状況の中で、中国による「原産地洗浄(偽装)」が活発化しています。
例えば、『Radio Free Asia』は以下のように書いています。
中国のSNSプラットフォーム「小紅書」や「抖音(TikTok中国版)」には最近、大量のいわゆる「原産地洗浄」広告が出現している。
そこでは東南アジアなど第三国を経由する新しい規制の宣伝だけでなく、アメリカの高関税を回避するための迂回輸出・貨物代理戦略も提供しており、中には「ワンストップ」転送サービスを謳い、「合理的にアメリカ関税をコントロールできる」と主張する業者も存在する。
(中略)
多くの抖音ユーザーは、転送貿易に対して史上最も厳しい取り締まりが行われていると警鐘を鳴らしている。
AIによるリアルタイムの貨物流動監視が行われ、東南アジアを経由した脱税を厳格に取り締まるという。
「サプライチェーン全体の申告が求められ、ボタン1個に至るまで出所を明示しなければならない。
関税詐欺が発覚すれば最高20年の懲役、脱税額の300%の罰金、さらに10年間の利益追徴が科される。
ベトナム、タイ、シンガポールなどもこの行動に協力しており、注意が必要だ」
と警告している。
■中国貨物業者、90日間の猶予期間を利用して密輸や迂回輸出を加速
最近大量に現れた「原産地洗浄」や「転送」広告について、東南アジアの匿名の台湾企業家は05月06日、『Radio Free Asia』の取材に対して次のように語った。
「トランプ大統領が先月、中国製品への関税を最大245%に引き上げると発表した。
アメリカ側は70カ国以上に対して90日間の関税猶予期間を与えた。
東南アジア諸国や台湾はこの間、アメリカ向け関税がわずか10%であり、中国よりはるかに低い。
そのため大量の中国貨物業者が陸路や海運で第三国に貨物を転送し、税関を買収して密輸、いわゆる“ブラックコンテナ”で迂回輸出を行っている」と明かした。
また「中国と陸路で接する主な国はベトナムとラオスだ。
多くは密輸でなんとかベトナムに持ち込み、そこで税関と結託して原産地証明を発行する。
通常、中国国内で“メイド・イン・ベトナム”や“メイド・イン・ラオス”のラベルを貼り、現地で産地証明を取得し、10%の関税率を適用して輸出している。
マレーシアでも、中国本土から半密輸・ブラックコンテナで持ち込む事例が多い」と述べた。
さらに「中国本土からアメリカに貨物を出すには、90日以内に処理しなければならない。生産しても売れずに本土に残れば、無駄になり、誰にも使われなくなる」とも指摘した。
この台湾企業家によれば、初期の「原産地洗浄」はラベルの張り替えだったが、以前はベトナムに半製品を一時輸入し、9カ月以内に出荷すれば関税が免除された。
今では米中貿易戦争の影響で、ベトナムで60%以上製造されなければ「メイド・イン・ベトナム」と表示できず、取り締まりは非常に厳しくなっているという。
今後は半製品であっても高関税の対象になるため、一部南部工場では完全なベトナム生産体制を構築して対応している。
(後略)
上に政策あれば、下に対策アリ――といいますが、ワンストップの「現産地洗浄(偽装)」サービスが跋扈するようになっている――とは驚くべきことです。
Money1でも先にご紹介したとおり、中国の巻き添えを食いたくないので、韓国では「原産地偽装」について産業通商資源部が(慌てて調査し)、2025年03月には「285億ウォン」の対米「迂回輸出」があったと報告しています(下掲記事を参照)。

韓国だけではありません。合衆国から「中国企業の原産地洗浄(偽装)を支援しているな」といわれないため、
●ベトナムでは原材料と輸入品の原産地検査を強化し、偽造証明書の発行を防止
●タイでは合衆国向け製品の原産地検査を強化し、脱税行為を防止
に励むようになっています。
『Radio Free Asia』の記事によれば、
「通関書類や原産地証明を処理できる貨物代行(通関業者)のビジネスが急成長しており、料金も急騰している」
「マレーシアではコンテナを丸ごと入れ替えるケースもあり、現地で貨物を再梱包する例もある」
と指摘しています。
要するに必死です。合衆国を主要市場とする生産業者は、絶対に貨物を(低関税で)合衆国に届けねばなりません。どうしても中継拠点を確保してアメリカに輸出するしかない――というわけです。
(恐らく国有企業も含む)中国企業は、「原産地洗浄(偽装)」によって他国製と偽り、税負担を軽減しながら合衆国市場に製品輸出を続けようとしています。
(吉田ハンチング@dcp)