メキシコの壁建設問題に連邦政府の閉鎖問題などで、波瀾万丈な事態となっているアメリカ連邦政府の予算。ここにきて09月27日にトランプ大統領が発表した「税制改革案」が注目されています。
この案では、連邦法人税の最高税率を現行の「35%」から「20%」まで引き下げるとなっています。トランプ師匠は、選挙期間中には「15%まで下げてやる」と息巻いていたのですが、さすがに財源の手当がつかないということで「20%」で妥協した模様です。
また個人所得税についても、現在の7段階から、
・12%
・25%
・35%
の3段階に整理して、35%以上を課す区分を追加することを提案しています。今回の税制改革案で興味深いのは「パススルー企業」への減税プランも盛り込まれていることです。
日本ではあまりなじみのない言葉ですが、パススルー企業(あるいはパススルー事業主体:pass-through entity)は、法人税を支払わない代わりに、投資家(パートナー)またはその構成員が、事業の所得・損失の持ち分を取り込んで課税する、という仕組みになっています。
法人税は課税されないですが、その事業の自分の持ち分だけ責任を持ち、その分を個人所得に取り込んで(個人)所得税を支払うのです。実はアメリカの企業の多く(95%ともいわれます)がこのパススルー企業。「有限責任会社(Limited Liability Company:LLCと略されます)」が、このパススルー企業の代表的な例です。
現在は「パススルー企業」への最高税率※は「39.16%」。トランプ師匠のプランでは、これを「25%」に下げることになっています。約15%も下げるわけですからこれは大盤振る舞いといえるでしょう。
※出資者で年間所得が40万ドル超の高額所得者への税率です
ロイターは「税制調査団体のこれまでの試算によると、税制改革に伴い連邦政府の歳入が今後10年間で最大5兆9,000億ドル落ち込む」と報道しています。ただし共和党では、税制の穴埋めが行われ、減税の効果によって高い経済成長が実現できる、としています。
アメリカは大統領の交代とともに政策ががらっと変わるといわれますが、今回のトランプ師匠の税制改革案はあまりにもドラスティックなもの。とりあえず驚くほかありません。
(柏ケミカル@dcp)