アメリカの「鉄鋼・アルミ関税上乗せ」発動に対し、06月01日、EU(欧州連合)はすかさずWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)に提訴しました。同時に中国の技術移転問題についてもWTOに提訴すると発表。
中国に進出したEU域内企業が、その企業が持つ知的財産・技術・使用権を中国に移転するよう強要される件を、自由貿易に対する重大な違反と目しているのです。
「中国に進出するならお前の技術をよこせ」という中国の「ド厚かましい要求(技術移転を義務にしている)」には日本企業も苦しめられてきました。
日本の高速鉄道の技術を盗用したにも関わらず、「中国独自開発」などと世界に喧伝(けんでん)しているのを苦々しく思うのは読者の皆さんも同じでしょう。
EUのこのWTO提訴に踏み切るという発表は、先にこの件を問題視して中国を非難したアメリカに荷担するものです。アメリカとしてはEUの圧力は助けになるでしょう。しかし、EUはアメリカを提訴し、06月20日にもアメリカ製品について報復関税を導入するとしています。
欧州委員会の通商政策担当のマルムストローム委員(Cecilia Malmström:セシリア・マルムストローム/上掲写真)は、「EUは、アメリカと中国の両方を提訴する。アメリカ・中国のどちらかを選ぶことはない、という意思表示だ」と明確に述べています。
また、トランプ大統領が発動した鉄鋼・アルミの関税上乗せについては「純粋な保護主義」と断じ、アメリカがその発動の根拠としている「安全保障上の理由」にも「欧州からアメリカへの鉄鋼・アルミの輸出がアメリカの安全保障上の脅威になるわけがない」と指摘しました。
Money1でもお伝えしたとおり、今回のアメリカの関税上乗せは、1962年に成立した「通商拡大法」の第232条を根拠としていますが、保護主義を糊塗(こと)するために強引に古い法を持ち出してきた感は否めません。
マルムストローム委員の発言はアメリカの傲慢さを指弾するもので、これには日本のみならずターゲットになった国々がみな等しくうなずくでしょう。こういう指摘ができ、アメリカ・中国に毅然と対抗策を実行できるのは、さすがEUですね。
アテが外れたのは中国です。アメリカに対し、同じように圧力を掛けられているEU・日本・カナダなどを味方につけて対抗しようと考えていたふしがありますが、その目論見は完全に潰れました。
EUからすれば「知的財産を強奪するお前なんかと一緒にするな!」ですね。EUの男前な対応は、日本も(できれば)見習いたいところです。
(柏ケミカル@dcp)