『HMM』といえば、韓国最大手の海運会社です。というか海運大手は『HMM』しかないといってもいいのですが、最大の株主は国策銀行『産業銀行』です。
『産業銀行』は『HMM』の株式を20.7%保有していますが、株式の全売却を急いでいます。
カン・ソクフン『産業銀行』会長は、早急に売却する旨を主張しています。なぜ急いでいるかというと、理由があります。
2023年06月20日に行われた就任1周年記者懇談会で、「『HMM』の株価が1,000ウォン下がると、BIS比率が0.07%ポイント下落する」とし「これによって1兆8,000億ウォン程度の資金供給余力が減少するので『HMM』売却が重要だ」と赤裸々に事情を告白しました。
「ぶっちゃけたでオイ」という話です。
「BIS比率」というのは、世界銀行が銀行に課している自己資本比率のことをいっています。銀行の健全性を示すものなので、これが基準値※より下がるわけにはいきません。
※「国際業務を行う銀行の自己資本比率は、8%を超えていなくてはならない」という国際統一基準です。
『産業銀行』はこれがどんどん下がっているのです。以下をご覧ください。
実は、最も大きく自己資本比率を下げたのは『韓国電力公社』(以下『韓国電力』と表記)のせいです。
読者の皆さまもご存じのとおり、『韓国電力』は業績が大赤字となっており株価も下げています。大株主はこれまた『産業銀行』です。
『産業銀行』によると、『韓国電力』のせいで自己資本比率が「1.95%」も下がった、とのこと。『韓国電力』の実績が保有持ち分率だけ産業銀行に反映された結果です。
銀行が高いBIS比率を維持するには、自己資本を増やすか、リスク資産を減らす必要があります。
さらに問題は、自己資本比率を維持しなければなりませんので、貸し出しに使えるお金の量も減っていくという点です。
韓国経済は現在複合危機の最中で、流動性を高めないといけない状況なので、「国策銀行で貸し出しに回せるお金が減る」なんてことはあってはならないのです。
そこで結論として、『HMM』は早いとこ売却したい――となります。カン会長は「早ければ年内」という意向を示していますから、ドタバタです。
それにしても、韓国のドタバタは尽きませんし、(傍で見ている限り)飽きません。
(吉田ハンチング@dcp)