不動産PF(プロジェクトファイナンス)が韓国のアキレス腱となっており、「どうするんだ」と注目ポイントでした。韓国で唯一の内需といっていい不動産市場が弱々なままでは困るのです。
2024年05月13日、韓国金融委員会と金融監督院が共同で「不動産PFについて処理する」方針を公表。
これは不動産市場の健全化に向けてはいい話なのですが……まず指摘しておきたいのは、これまで不動産PF関連のエクスポージャーは「130~135兆ウォン」と報じられてきたのに――これが「230兆ウォン」と、一気に100兆ウォンも増えたことです。
エクスポージャーは日本語に訳しにくい単語ですが、「リスクにさらされている資産」ぐらいの意味です。
つまり、これまで「135兆ウォンの資産にリスクあり」だったのが、「実は230兆ウォンでした」となったわけです。
増えた理由は、これまでの「事業性の評価」では、本PFとブリッジローンを対象にしていたのですが、土地担保融資と債務保証約定についても実施したこと、対象機関に『セマウル金庫』を含めたことによります。
Money1でもご紹介したとおり、『韓国銀行』の読みでは「PF問題は危機的な事態には至らないだろう」でした。ただし、『韓国銀行』も「リスク資産が適切に見積もられているのであれば……」と懐疑的な書き方をしていました。
『韓国銀行』の懐疑的な視線が的を射ていたと見るべきしょう。
「秩序ある軟着陸を目指す」そうです
今回の金融委員会・金融監督院は「「不動産PFの秩序ある軟着陸のための今後の政策方向」としています。放っておいたら秩序なき墜落になったのか――といいたくなりますが、事実はそのとおりなのでしょう。
不動産PFに関与している全事業場に、厳格な事業性の評価を行い、
・良好
・普通
・注意
・不良懸念
の4つに区分し、「良好」格付けでは再編や自律売却を、「不良懸念」格付けの場合は償却や公売などで整理するとしています。建設業界によると、「全事業場の5~10%程度が不良事業場に分類される見通し」とのこと。
評価の結果、事業の継続が不可能と判断される事業場は「おしまい」にすること(事業を整理)まで可能になり、最大23兆ウォン規模※の不良事業場に対する再編成及び整理が行われると見られています。
※正確には「11.5兆ウォン~23兆ウォン」という見積もり。
「不良懸念」と判断された事業所に融資した金融機関は引当金を融資額の75%まで積まなければなりません(従来は30%で済んだ)。引当金を積むのもばかばかしいので、不良懸念となった事業所は売却することになると考えられます。
2024年の下半期には「約4兆~7兆ウォン規模」の事業場が競売にかけられると予想されています。
問題は「23兆ウォン程度で済むのか?」です。
「事業性アリ」あるいは「一部に難アリ」と評価される場合には、お金を回す――としているのですが、銀行と保険圏が最大5兆ウォン規模の共同融資で資金繰りを助ける――とのこと。
これもまた「そんな規模で足りるのか?」という疑問があります。
やってみないと分かりませんが、今回の措置はいわば「韓国不動産バブルの後始末」ともいえるものです。
文在寅前政権時の不動産バブルを支えた「資金供給スキーム」(不動産PF)が行き止まりになって、不良債権(およびその予備軍)を整理するわけですから。
これでうまくいくのか、韓国当局のお手並み拝見です。
(吉田ハンチング@dcp)