経済ニュース、また投資関連の報道で「ボルカー・ルール」という言葉が登場することがあります。今回は「ボルカー・ルール」についてご紹介します。
2010年に「金融規制改革法」(ドッド・フランク法と呼ばれます)が成立しました。この法律は、2007年のいわゆるサブプライムローン問題、また2008年のリーマン・ショックによる金融危機の反省に基いてつくられました。その精神は「預金者のお金を投機的リスクの高い取引に使わせない」ことです。
金融規制改革法には、「銀行の市場取引を規制するルール」が盛り込まれており、これが「ボルカー・ルール」です。この「ボルカー」はポール・ボルカー元FRB(連邦準備理事会)議長に由来し、当時のオバマ大統領の肝いりでその名が冠せられました。
※ポール・ボルカーは2008年に大統領経済回復諮問委員会委員長に任命されています。
ボルカー・ルールでは、銀行(正確には銀行等:banking entities)の自己勘定取引(proprietary trading)が原則禁止されました。
「自己勘定取引」とは余り聞き慣れない言葉ですね。自己勘定取引とは以下のように定義されています。
●「自己勘定取引(proprietary trading)」とは、銀行等の「取引勘定(trading account)」において、1または複数の「金融商品(financial instruments)」の売買(purchase or sale)に、当事者(principal)として関与することをいう。
つまり、「銀行が当事者として、銀行預金者のお金を使って金融商品の売買すること」を許さないというわけです。これにより、銀行が当事者として、
1.有価証券
2.デリバティブ
3.商品の先渡しによる売却契約(商品先物)
4.これらの有価証券、デリバティブ、契約についてのオプション
5.その他の有価証券または金融商品であって当局が定めるもの
このような商品を売買することができなくなりました。ただし、ボルカー・ルールは、銀行が当事者としてではなく、「顧客のために」市場で取引することは認めています。
つまり、銀行が預金者のお金を使って当事者として(つまり自分のために)取引をすることは禁じるが、顧客のために取引することは許す、というわけです。ある意味で「フィデューシャリー・デューティー」の発揮を促した法律ともいえるのではないでしょうか。
自己勘定取引は、銀行のもうけ口の一つでもありましたので、金融規制改革法は業界から異論が噴出しました。しかし、金融危機によって銀行のずさんな経営が明らかになりましたので、オバマ政権下で可決され、2015年07月21日から全面施行されています。
ここでトランプ師匠の登場です!
トランプ大統領はこのボルカー・ルールの「規制緩和」を目論んでいるのです。
(柏ケミカル@dcp)