韓国の通貨・金融当局もどうしたものかと悩んでいるでしょうが、絶対にあった方がいいのが「米韓通貨スワップ」(韓国側の呼称:合衆国はドル流動性スワップ)です。
ドル流動性スワップは「ドルの短借システム」
(中央銀行間の)ドル流動性スワップが結ばれていると、いざというとき合衆国『FED』は相手国の中央銀行に対して「ドル」を供給してくれます。
現在締結している契約では『韓国銀行』は最大600億ドルを調達可能です。
ただし、これは一時的なドル貸しであって、相手国は借りるドルと等価になる自国通貨を預けなければいけません(等量になる通貨を交換するのでスワップ)。また、ドルを返すときには利子を付けて返却します(同時に預けた自国通貨も返ってくる:スワップバック)。
簡単にいえば、ドル流動性スワップはドルの短借システムです。
しかし、これが締結されているということは、「いざというときには必要なドルを合衆国から借りられる」ことを意味します。そのため、脆弱な通貨(およびその通貨を持つ国)にとってはドルの裏打ちがあることになり、信用の低下を食い止めるための歯止めになるのです。
韓国ではよく「通貨スワップは安全弁」といいますが、合衆国が提供するドル流動性スワップは全くそのとおりのものです。
韓国は自国通貨ウォンがローカルカレンジーであるため、とにかくハードカレンシーを持つ国との「通貨スワップ」を締結することを目指しています。
しかし、日本との「通貨スワップ」は(大変ありがたいことに)終了。EU、イギリスとは締結できていません。
2020年03月のドル流動性スワップは韓国の悲願、ドルが調達できる契約の実現でした。実際、ドルが枯渇しドボン寸前だった韓国はドル流動性スワップで198億7,200万ドルが供給され、助かったのです。
「米韓通貨スワップを延長せよ」の声が上がる
このドル流動性スワップの契約は来る12月31日に終了します。これは、世界的にドルが枯渇した状況に対応した、あくまでも臨時のものであったためです。
合衆国は、ハードカレンシー(およびそれに準じる通貨)を持つ国とは常設のスワップラインを設けていますが、臨時のスワップラインは合衆国の都合で終わります。
しかし、脆弱なローカルカレンシー「ウォン」を持つ韓国としては、この契約を延長してほしいのが本音です。
では、当の『韓国銀行』はどのように反応しているのかというと、延長してほしいというのが希望でしょうが、それを露骨には述べてはいません。
2021年11月25日、『韓国銀行』の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁が、記者懇談会で以下のように答えています。
(前略)
質問:金通委でも幾つかの言及がありました。米韓通貨スワップは今年の年末終了と見ていいですか?李総裁 合衆国が韓国銀行とだけ締結した、両者間だけの協約ではなく、9カ国の中央銀行と締結したものなので、『韓国銀行』が終了すると断定して話すことはできません。
私たちは合衆国とその問題をずっと、現在も協議しています。大きな危機を予想し、大きな低迷も予想していたが、現在は世界経済は回復を続けています。グローバル金融の状況も安定しています。通貨スワップが必要だった当時とは状況が変わったというのは、明らかな事実です。それは条約締約国がみな理解しています。その上で、この問題は協議中です。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「通貨政策方向関連記者懇談会」
(原文・韓国語/筆者意訳)
李総裁は、『韓国銀行』が「終了する」と断定できないとし、「今も協議中」と含みを持たせていますが、ドル流動性スワップが必要とされた当時とは状況が違うと断言しました。ですので、まあ終わっても仕方がない――と言っているわけです。
いわば達観している感じですね。
韓国としては名残惜しいでしょうが、合衆国が決めることなので、終了でも仕方ありませんね。
(吉田ハンチング@dcp)