中国の外貨準備は2013年半ばに4兆ドルを超えましたがその後は減少し、2016年末には約3兆ドルで底を打ちました。2017年には増加に転じ、2018年04月末時点で3兆1,248億ドルとなっています。
『夕刊フジ』の田村秀男先生の連載コラムで非常に有益なデータ(出典は『CEIC』)が掲載されていましたので、以下に引用してご紹介します※1。このグラフは中国の「外貨準備」と「対中国直接投資」の推移を示しています。
中国への直接投資の金額が右肩上がりで続いていますが、これが外貨準備を底上げしている、というのが田村先生の指摘です。中国の外貨準備は上げ底で、中国に投資されるお金を繰り入れることによって大きくなっているというわけです。つまり、外国からの資金流入が減少すると外貨準備は減少します。
外貨準備がここまで膨らんでいるのは貿易黒字のためでもあります。中国の対外黒字の金額は年間4,200億ドルにも上ります。この黒字のほとんどはアメリカから稼いでいることは皆さんもご存じのとおりです。アメリカ商務省の貿易統計によれば、2017年のアメリカの対中貿易赤字は5,660億ドル※2。
トランプ大統領が貿易戦争を続けているのはこの赤字をなんとかするためで、中国に対して「2,000億ドル減らせ」と主張しています。中国も報復関税をかけるなどし、現在は机の下で足の蹴り合いをするような交渉の最中ですけれども、仮に2,000億ドルが減ったとすると中国の対外黒字はほぼ半減することになります。
つまりポイントは2つです。
・対中直接投資が減少すると外貨準備の上げ底部分が減少する
・貿易戦争で対米黒字削減が行われると外貨準備は減少する
外貨準備は、「タンス預金」と揶揄されることもありますが、為替を安定させるために使う、いわば緊急時用の燃料タンクのようなものです。自国通貨安が起こったときに頼りになるのは外貨準備しかありません。
現在通貨安に見舞われているアルゼンチンが「世界を股にかける高利貸しIMF」と接触を始めているという報道がありますが、これは自国通貨「アルゼンチンペソ」を防衛するための外貨準備が足らないことを認識しているという表れでもあります。外貨準備が尽きた時点でドボンですので、尽きる前に手を打たなければいけないのです。
アルゼンチンはともかく、中国の外貨準備はたとえ「3兆ドル超ある」と公表されていても「脆弱」と見ることができます。中国当局は中国からの資金流出、外貨流出を厳しく制限していますが、それは自国の外貨準備が頼りないことを理解しているからである、ともいえるのです。
※1
⇒データ引用元:『夕刊フジ』田村秀男「『お金』は知っている」2018年(平成30年)05月11日(10日発行)
※2ちなみに中国の2018年1-3月期の対米貿易黒字は前年同期比で19.4%増の582億5,000万ドル。
(柏ケミカル@dcp)