経済ニュースを見ているとしばしば「マネタリーベ-ス」という言葉が登場することがあります。また、このマネタリーベースと一緒に「マネーサプライ」という言葉が使われることも多いですね。今回は、この二つの言葉についてご紹介します。
■お金が私たちに供給されるシステム
サラリーマンの皆さんであれば、毎月会社から給料が出て、その支給金額は個人の銀行口座に振り込まれますね。皆さんはATMを使うなどして、その振り込み口座からお金を引き出します。皆さんの手に渡る紙幣や硬貨はどのようにして供給されているのでしょうか!?
日本の通貨「円」、紙幣を発行しているのは日本国の中央銀行である「日本銀行」です(硬貨は日本政府が発行していますが、硬貨はあくまでも「補助貨幣」です)。日本銀行は、政府に属しているわけではありません。政府から独立した存在です。そして日本銀行だけが紙幣を発行することができます。
紙幣は「日本銀行券」と呼ばれますが、これは文字通り日本銀行が印刷している「券」だからですね。その券を私たちは便宜上価値があるものとして認め、お金として使っているわけです。
日本銀行が発行した日本銀行券は「民間銀行」に供給されます。この供給が「マネタリーベース」です。私たちが使うお金は、民間銀行からATMなどを通じて入手します。つまり私たちが日々使っているお金は、日本銀行から民間銀行を通じて供給されているわけです。「民間銀行を通じて世の中に出回るお金の総量」を「マネーサプライ」と呼びます。
※・・・・・・日本銀行では2008年4月まで「マネーサプライ」という言葉を使っていたのですが、現在では「マネーストック」という言葉を使っています。この用語の変更に伴い、一部定義も改訂されています。その詳細については、以下を参照してください。
■「マネタリーベース」が拡大すると「マネーサプライ」が増えて・・・・・・
マネタリーベースが拡大すると景気が良くなり、物価も上がるといわれます。これは日本だけでなく、世界各国でも共通する仕組みです。
その理由は下のような流れで説明されます。
中央銀行(日本なら日本銀行)が民間銀行に大量のお金を供給する
(これがマネタリーベースの拡大)
↓
金利が下がる
↓
民間銀行は資金調達が簡単になる
↓
企業や世帯向けの貸し出しが増加する
↓
マネーサプライが拡大する
↓
景気が良くなり、物価も上がる
貸し出されたお金は当然何かを購入するのに使われるわけですから、消費活動が活発になり、つまり出回るお金の量が増え、消費行動が活発ということは景気が良いということで、景気が良いということはそこで消費される物の価値が上がり、それが物価が上がるということ、なのです。
つまり、中央銀行は「マネタリーベース」をコントロールすることで、その国の景気を管理できるというわけで、これこそが中央銀行の役割なのです。
覚えておきたいのは、
マネタリーベースの拡大はマネーサプライの拡大を生じる。マネーサプライの拡大は景気を良くする
です。「景気を良くするために、マネタリーベースが……」などというニュース記事があるのは、上記の流れを踏まえた上でのことなので、この理解は非常に重要です。
ただし、これはあくまでも「金利が正常にプラス」の場合です。2016年現在、日本銀行はマイナス金利を含めた「質的量的緩和」を行っており、このために世界でも類を見ない事態になっています。これについては別項でご紹介することにしましょう。
(高橋モータース@dcp)