アメリカ政府は、07月06日に発動された第1弾(First Set)に続き、08月23日から「約160億ドル分の中国からの輸入品目について25%の関税を賦課する」ことを発表しました。追加関税第2弾(Second Set)の発動です。
Money1でもご紹介したとおり、アメリカは「中国からの輸入品全てに関税を追加賦課する」ことも射程においています。USTR(Office of the United States Trade Representativeの略:アメリカ通商代表部)によれば、以前発表していたリスト284品目のうち279品目を対象としたとのこと。
⇒引用元:『USTR』「USTR Finalizes Second Tranche of Tariffs on Chinese Products in Response to China’s Unfair Trade Practices」
https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2018/august/ustr-finalizes-second-tranche
当然ですが、中国は以前から声明を出していたとおり、これに対する報復関税を発動するでしょう。中国の報復関税賦課が行われれば、トランプ大統領は次に「2,000億ドル相当の中国からの輸入品目」について追加関税を賦課する動きに出るはずです。
その関税率が当初の「10%」になるのか、トランプ大統領が怪気炎を上げているとおり「25%」になるのかはまだ分かりません。しかし、このSecond Set発動によって、貿易戦争激化の方向に一歩進んだのは確かです。
■中国政府は「元安」阻止に向けた動き!
一方の中国。追加関税の賦課を元安である程度無効化しようとしたのか、これまで中国政府は元安について特に言及もありませんでしたが、ついに元安阻止についての動きを始めました。08月03日に中国人民銀行は「為替フォワード取引について銀行に20%の準備金保有を義務付けるルール」を発表したのです。
これは、2016年07月に導入した後、いったん撤廃したのに再度引っ張り出したもの。簡単にいえば「元安」「ショートに張る」のを阻止するためです。貿易戦争での中国の不利、また元安傾向などを鑑みれば、これからも元安が進むと見る投資家が多いのは当然のことですね。膨大なショートポジションがたまると中国としては困ったことになります。
そこで、「積み上げた金額に合わせて一定の率で準備金を積むこと」というルールを課して、取引量に歯止めをかけようというわけです。準備金がある程度必要となればポジションの総量に制限を掛けられるだろうという意図なのです。
また08月06日、中国人民銀行は一部の市中銀行に対して「元の安定性に寄与するように」との指示を出したとのこと。「元安のペースを緩め、投資家の動きが元安一辺倒にならないようにする」のが目的と考えられています。
元安の進行は、対アメリカでは追加関税を和らげる緩衝材として働くかもしれませんが、一方で「ドル建て対外債務の返済を困難にする」という大きなデメリットを中国にもたらします。かつてMoney1でもご紹介したとおり、現在の中国は対外債務が大きく膨らんでいる状態です。元安はこれを相対的に大きくしてしまうのです。非常に危険な状態といえるでしょう。
(柏ケミカル@dcp)