2021年04月06日から、韓国株式市場ではネイキッド・ショート・セリング(後述)に対する規制が実施されました。
先に本件を報じた韓国メディア『毎日経済』から記事の一部を引用します。
6日から不法空売り(無借金空売り)をして摘発されれば注文金額の最大100%課徴金を課せられる。
金融委員会は、空売りに対する処罰を強化する内容の「資本市場と金融投資業に関する法律(資本市場法)」改正案がこの日から施行されると明らかにした。
改正案の施行で不法空売りに刑事罰と課徴金賦課が可能となった。
そもそも「空売り」とは?
株式の取引をされない方は「空売り」が分からないかもしれません。「空売り」というのは、株価の下落局面でもうけるための手法です。
普通、株式の取引は「買って」から「売って」、その差額がもうけになります。安いときに買って高いときに売るわけです。
しかし、株価が下がっている局面で、高いときに売り、下がったところで買って、その差額をもうけにする手法があります。これが空売りです。
例えば、任天堂株が「6万6,620円」のときに100株売ると、666万2,000円が手に入ります。なぜ保有していない株式を売れるかというと「保有している株主から借りて売る」からです。
もちろんこの株式は後で「借り賃」を足して返却しなければなりません。仮に借り賃を1%としてみましょう。
その後、任天堂株がどんどん下がって、「5万9,280円」まで下がったとします。この時に100株買い、借りた人に株式を返却するのです。
すると収支は、
出費(株式買収):592万8,000円
借り株代金(1%):6万6,620円
小計:+66万7,380円
となって見事にもうけが出ました。このようにうまく空売りを行うと、株価が下がる局面でももうけを出すことができるのです。
「不法空売り」ってナニ?
ポイントは、空売りを行うにはまず株式を借りてこなければならない、という点です。これには上記のとおりお金がかかります。
韓国メディアが「不法空売り」といっているのは、「株式を借りず(貸し株の裏付けがなく)」「無借金で」空売りを行うことを指しています。この空売りを「ネイキッド・ショート・セリング(naked short selling)」というのです。
当然ですが、貸し株の裏付けがないため、これを大量に行われると市場が巨大な下落に見舞われる恐れがあります。そのため、日本でもこれは2008年10月から禁止となっています。
韓国市場でもかねてから市場参加者から「ネイキッド・ショート・セリング」に対する不満があったのですが、これまでは過料の賦課のみで見逃されてきました。しかし、今回の法改正によって、発覚した場合には、注文金額の100%までを徴収でき、1年以上の懲役また不当利益の3~5倍の罰金を科すことができるようになりました。
先にご紹介したとおり、韓国では2021年05月02日まで全面空売り禁止。韓国は「世界最長の空売り禁止措置を行っている国」となっています。
来る05月03日から一部銘柄について空売り禁止措置が解除されますが、この日のプライスアクションにぜひご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)