韓国「『CPTTP』に加盟しない理由はない」そっちになくても「こっちにはある」

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そっちになくてもこっちにはある――という話です。

2021年10月31日、韓国メディア『毎日経済』に「『CPTTP』はアジア太平洋貿易の新しい標準になる……韓国が加盟しない理由はない」という記事が出ました。

『ソウル大経』のパク・ジヒョン経済学科教授にインタビューした記事で、タイトルどおりの内容ですが、韓国の都合で勝手に決められても困りますね、という話も入っています。

まず、リードの部分に見逃せない箇所があります。以下です。

(前略)
彼(パク教授のこと:筆者注)は経済・政治など多くの領域で国際社会の模範生とされる韓国の地位をうまく活用しなければならないと見ている。
(後略)

⇒参照・引用元:『毎日経済』「『CPTTP』はアジア太平洋貿易の新しい標準になる……韓国が加盟しない理由はない」

経済・政治など多くの領域で国際社会の模範生とされる韓国」などと述べていますが、果たしてそうでしょうか。

国連制裁決議を破って北朝鮮を支援するのは政治的模範生のすることでしょうか。日本との約束を守らないのは模範生の所業でしょうか。

日本とFTAを締結する効果がある?

日本とも関係のある教授の回答を以下に引用します。

(前略)
――近いうちに政府は『CPTTP』加入の推進を公式化する見通しだ。

世界経済の透明で公正な運営のために、アジア・太平洋地域の国際貿易秩序の新しい基準になることができる包括的・漸進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)加入は積極的に考慮する必要性がある。

当初、日本が主導する交渉は負担になるため、アメリカ合衆国が参加する際に一緒に動かなければならないという意見が多かった。

しかし最近、イギリスだけでなく中国、台湾までが交渉に入り、私たちも参加を考慮することになった。

『CPTTP』加盟国​​は、ニュージーランド、メキシコ、ベトナム、シンガポール、日本、ペルー、カナダ、オーストラリアだ。

協定に参加すると、現在韓国がFTAを結んでいないメキシコ、日本とFTAを締結する効果がある。
(後略)

データ引用元は同上/強調文字は筆者による

日本が主導する交渉は負担」と認めている点が面白いのですが、『CPTTP』はそもそも加盟国の全てが賛成しないと入れない建て付けですので、日本が主導しようがしまいが、日本が反対すればそれだけで韓国は加盟できません。

韓国では「日本が議長国ではない来年になれば……」、あるいは「他の国々が賛成すれば日本は反対しないだろう」などの読みが披露されますが、極めて甘い情勢判断だといえます。

注目いただきたいのは「『CPTTP』に加盟すればメキシコ、日本とFTAを締結する効果がある」などと述べている点です。

韓国は日本に飲み込まれることを恐れた

そもそも韓国は二国間FTA(自由貿易協定)を推進してきた国で、日本ともFTAを締結しようと交渉を重ねてきた過去があります。

しかし、これは結局実りませんでした。

というのは、韓国は貿易において莫大な対日赤字を続けている国。Money1でもご紹介したことがありますが、1988年以降で日本との貿易で1年たりとも黒字を出したことがありせん。

⇒データ出典:『日本国 財務省』公式サイト「輸出入額の推移(地域(国)別・主要商品別)」
グラフはMoney1編集部が制作しました

上掲のグラフのとおり、韓国の対日貿易収支は毎年「0」より下にあります。

これが自由貿易で関税がゼロになったらどうなるでしょうか。例えば、現在、日本からの輸入自動車にかけている8%の関税が撤廃されたら?

もちろん日本の高品質な自動車が韓国に今までより安く輸入され、韓国市場で売れるでしょう。結果韓国の対日赤字は増えることになります。自動車だけでなく、他の製品・農業漁業においても同様です。つまり、韓国側は日本からの輸入に韓国市場が席巻されることを恐れたのです。

別に筆者が勝手に述べているわけではありません。在大韓民国日本国大使館・経済部長・尾池厚之さんの証言があります。以下に一部を引用します。

(前略)
FTAの中味としては、日本側は、①先進工業国にふさわしく工業製品はほぼ完全な自由化を行う、②共に弱みを抱える農林水産業は適度な自由化にとどめる、③金融、建設、運輸などのサービス業の分野での自由化の促進とか、特許権や著作権などの知的所有権を守る仕組みの整備とか、企業間の公正な競争を確保する制度の充実といった先進国が熱心に取り組んでいる事項については、モデルになるような立派な水準で合意する、というようなことを目指した。

両国の産業構造を考えれば、こうした内容で韓国も同意すると考えていた。

そして、これが重要なことだが、こうしてまとまったFTAを東アジアでのFTAの標準にすべく両国が協力して取り組んでいくことが両国の利益になると固く信じられていた。

当時の日本には、FTAを契機として、韓国への売込みを更に強化しようとの意識はあまりなかったと思う。

経済的実利を求めるというよりは、地域経済統合のモデルになるようなFTAを作るという意識の方が強かった。そして、経済構造が似ている韓国は、理想的なパートナーだと見られていた。

しかし、韓国では、日本は韓国に比べてはるかに大きな経済大国だとの認識が一般的であり、FTAができると経済的に日本に飲み込まれてしまうとの懸念すらあったように思う。

当時日本では、石油製品、石油化学製品、布地・衣服などの軽工業品では韓国の方が有利だと見られていたが、韓国では、FTAができると、ほとんど全ての工業製品で日本製品に負けると考えられていたようだ。

この損失を埋め合わせるため、日本から農産物の市場アクセスや産業技術移転の面でどれだけの譲歩がとれるかが極めて大きな課題だった。

東アジア地域経済統合を進めていく上で何が必要かというような議論は韓国ではあまり重視されていなかったように思う。
(後略)

⇒参照・引用元:『在大韓民国日本国大使館』「日韓EPA/FTAについて」

というような意識の乖離などがあり、結局のところ現在に至るも日本と韓国の間でFTAは締結されておりません。

しかし、これは締結できなくて良かったかもしれません。

妥結せず現在まで実に20有余年(なにせシンクタンクによる共同研究が始まったのが1998年です)。その間に韓国が日本との約束を守らない国であるということが分かったのですから(産業技術移転もせずに済みました)。

そして、今回の『CPTTP』です。

日本とFTAを締結できなかった国がなぜ『CPTTP』に加盟できると考えるのでしょう。

「『CPTTP』に加盟すれば、メキシコ、日本とFTAを締結する効果がある」ではありません。逆です。日本とFTAを締結できななかった。だからこそ『CPTTP』には加盟できない――のです。

同じ話になるに決まっているではありませんか。

(吉田ハンチング@dcp)

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