国際収支統計は外国との取り引きを計上したものですが、いったい何を計算しているのかという件をご紹介します。
本質はその国の「外国からの資金流入」と「外国への資金流出」を計上し、その収支を計算しています。
資金流入といっても、流入の仕方は多岐に渡ります。例えば、外国に自動車を輸出してその代金を受け取る、観光客から宿泊代を受け取る、株式に投資した分の配当を受け取るなど、いろんな資金流入の方法があります。
逆に資金流出にも、外国から半導体製造用の装置を購入して代金を支払った、外国のネットサービスを利用して料金を払った、配当金を外国人に支払った、など多岐に渡ります。
国際収支統計ではそれぞれに対応する項目を設けています。そこに計上し、その収支を計算しているのです。
つまり、(その期間に)いくらの資金流入、資金流出になるのかの計算ができます。で、総資金流入と総資金流出を計算して、資金流入の方が多ければ、その分だけその国に外貨が残ったことになります。
これが外貨準備の元です。このようにして収支の黒字が積み上がったものが外貨準備高です。
ところが、国際収支統計というのは「国という巨大なシステム」のお金の出し入れを計上するものなので、どうしても誤差が生じます。
資金流出と資金流入を引き算しても、外貨準備高の増減と合わないというケースです。
外貨準備高が実際にいくらあるのかは勘定すれば明確に分かりますから、これは動かせません。外貨準備高がベースラインになって最もごまかしにくい、というのはこのためです。
で、合わないとどうするかというと「誤差脱漏」という計上項目の出番になるわけです。
例えば、総資金流入から総資金流出を引いて「10億ドル」だったとします。本来なら10億ドル外貨準備高が増えていないといけない、しかし、実際には外貨準備は「6億ドル」しか増加していなかったら……。
この場合は、差額の4億ドルを「誤差脱漏:-4億ドル」として計上し、国際収支統計の帳尻を合わせるのです。
スグにお分かりになると思いますが、これは悪用可能です。
例えば、その国に表に出したくない資金の流れがあった場合。上掲の例でいえば、「外貨準備高は6億ドルしか増えませんでした」として、誤差脱漏に4億ドルを入れてしまうのです。これで4億ドルの資金がどこへ消えたのか分からなくなります。
先にご紹介した、中国の誤差脱漏についての『日商岩井総合研究所』調査グループ主任エコノミスト・吉崎達彦発先生の考察は、このような「資金流出を隠せる」という点についてのものでした。
(吉田ハンチング@dcp)