指標(INDEX)は数多くありますがMACDほど重視されているものを他に探すのは難しいですね。今回もMACDの続きです。多くの株式銘柄のチャートを見ていると、こんなことに気付きます。株価は長期に下落トレンドが続いているのになぜかMACDの線は上がっているのです。これはどういうことなのでしょうか?
MACDを売買のサインに使うための鉄則として、考案者ジェラルド・アペルは著作の中で繰り返し、買いのサインに使用するにせよ、売りのサインに使用するにせよ「MACDが0の線を超えていることを確認せよ」と言っています。
例えば買いのサインとして使用する「MACDがシグナル線を下から上へとクロスしたら……」という点においてはネット上でよくいわれることなのですが、そのサインを確認するために「MACDが0の線を超えた位置で」という大前提があるのです。また、そのサインの確認に「50日の移動平均線で上昇トレンドにあることを確認」と述べています。
※「」はアペルの引用ではなく筆者が強調のために入れています。
前の記事で下落局面においてはMACDの「買い ⇒ 売り」のサインの精度が落ちる、というアペルの指摘を紹介しましたね。そのせいもあって、アペルは下落局面では「売り」(空売りにも使えます)にこそMACDを使え、と示唆しているのです。筆者のような初心者トレーダーからしても、このアペルの指摘は極めて正しいように思えます。
■株価が下がっているにのにMACDが上昇することがある!
以下のチャートは「エヌジェイホールディング」(銘柄:9421)の2016年2月1日-2017年1月24日のものです(引用はいつもどおり株マップ.comのクオンツチャート)。四角に囲んだエリアを見てください。MACDは「12日」「26日」の指数平滑移動平均(EMA)から成るものです。
MACDがシグナルを下から上に追い越したと確認できるのが2016年6月24日。この日の終わり値が「1,500円」です。それからMACDはシグナルを追い越し上昇を続けています。このクロスは本来なら「買い」を示すはずですね。しかし、その後株価はだらだらと下落を続けます。
そして通常なら「売り」を示すはずの、MACDがシグナルを上から下にクロスして追い抜くのが2016年8月15日。このときの終わり値は「1,268円」です。MACDのサインを信じて売買していたなら「-232円」です。大損ですね。
このときのトレンドは、50日の移動平均線が示すとおり明らかに下落局面。また、MACDは「0」のラインを割り込んでいる状況でした。このように、MACDは株価が下落しているのに上昇することがあるのです。このような際にMACDを使用するのは危険です。
アペル自身は下のように述べています。
「時には市場が下落しているにもかかわらず、次のようなパターンになることもある。MACDが上昇しているにもかかわらず、価格がゆっくり着実に下落し続けるパターンである。下げのモメンタムが弱まっているプラス材料が出ても、株式市場はそれに反応するスピードが非常に遅いのである。」
(『アペル流テクニカル売買のコツ』パンローリング社刊・原題『Technical Analysis:Power Tools for Active Investors』P.283より引用)
※「モメンタム」は「勢い・はずみ」という意味です。モメンタムというオシレーター指標もありますが、ここでは「勢い」といった意味で使われています。
MACDは非常に有力なINDEXですが、使用に当たってはこれまでの記事で説明してきたような、考案者のアペル自身が注意を促している点に十分気を配らなくてはならないのです。
(高橋モータース@dcp)