統一朝鮮への希望を抱いている大統領が韓国におり、そのため同国は北朝鮮に秋波を送り続けています。統一は民族の悲願という気持ちは分からなくもありませんが、実際にそれが成ったときにどのようなことが起こるのかはあらかじめ計算しておく必要があるでしょう。最近は全くはやらないイデオロギーの方へ傾くのですから、そのリスクは知っておくべきです。
実際、統一朝鮮とやらができた場合、そこで暮らす人々が少なくとも現代的な生活ができる国になるためには一体いくらかかるのでしょうか?
ドイツ再統一でいくらかかったのか?
同じように社会主義国であった東ドイツと統一を果たした西ドイツが参考になりそうです。
西ドイツと東ドイツに分かれていたドイツは、1990年再統一を果たしました。このときのデータを見てみますと、
東ドイツの人口:約1,611万人
西ドイツの人口:約6,268万人
東ドイツのGDP:約0.6兆ドル
西ドイツのGDP:約1.5兆ドル
でした。統一ドイツに突っ込まれた資金は、
民間投資:2.5~3.0兆ドル
公共投資:1.5~2.0兆ドル
といわれています。計「4.0~5兆ドル」もの資金が投じられたわけです。このような言い方はナニですが、人口比は4:1ですから、西ドイツの国民4人で東ドイツの国民1人を背負う統一だったわけです。
ただ、東ドイツの名誉のために付記しますが、社会主義国家の中では東ドイツは優秀な国で、GDPは約0.6兆ドルあり、この数字は当時の韓国のGDPの倍以上なのです(1990年当時韓国のGDPは2,793億ドルしかなかった)。
統一朝鮮は恐らく約4兆ドルかかる
統一朝鮮ですが、現在の人口・GDPを見ると以下のようになります。
北朝鮮の人口:約2,549万人
南朝鮮の人口:約5,147万人
北朝鮮のGDP:173.6億ドル
南朝鮮のGDP:1兆5,310億ドル
人口比はほぼ2:1、GDPの差は比較するのもナニなほど隔たっています。北朝鮮は日本人が想像するよりもずっと貧しい国なのです。大きなお世話かもしれませんが、弾道ミサイルなんか飛ばしている場合ではありません。
問題なのは、韓国の国民2人で北朝鮮の国民1人を背負おうという、統一ドイツよりもずっと負担の大きい統一になるという点です。
ではどのぐらいの資金が必要になるでしょうか? 対GDP比で考えてみます。
統一ドイツの場合、東西を足したGDPが約2.1兆ドルありました。民間投資・公共投資の合計金額が4.0-5.0兆ドルですから、対GDP比でおよそ2-2.5倍です。
これを当てはめますと「約3-3.9兆ドル」です。だいたい4兆ドルは覚悟しておくべきということでしょう。日本円にすると、2019年10月31日のレートで「432.66兆円」です。途方もない金額といえますが、中国のGDPのほぼ1/3ですから、もし社会主義に傾いた統一朝鮮ができたら中国に支援を仰ぐべきかもしれませんね。
(柏ケミカル@dcp)