2025年06月23日、『Beyond Parallel』は「Chinese Platforms in the Yellow Sea’s South Korea-China PMZ」(黄海における韓国・中国PMZ内の中国の構造物)というリポートを公表しました。
『Beyond Parallel』というのは、アメリカ合衆国の著名シンクタンク『CSIS』による韓国統一・北朝鮮・韓半島情勢を対象とした、中立・総合・実証的な分析サイトです。
例の中国が黄海に建設している構造物についてのリポートです。
非常に面白い内容なので、詳細は『Beyond Parallel』のサイトを見ていただきたいのですが、同サイトでは以下のような主要な調査結果(Key Findings)を挙げています。
・3基の中国海上構造物—1基の統合管理プラットフォーム(上記写真)および2基の養殖用ケージ――が、韓国政府との事前協議なしに、韓国・中国の暫定措置水域(PMZ)内に設置されている。
・衛星画像分析により、中国の構造物のうち1基は元々の海上石油掘削プラットフォームを改造したものであることが判明しており、それは周囲の養殖ケージの中央運用ハブとして機能し、6つの運用フロアを有し、養殖を超える用途への拡張の可能性を持っている。
・韓国政府による「構造物をPMZ外に移設するよう求める要請」は繰り返し拒否されており、加えて中国政府は一方的にPMZ内に「航行禁止区域(no-sail zones)」を設定し、2018年以降、黄海に少なくとも13基の追加ブイを設置している。
・2025年02月下旬、韓国の調査船がPMZ内に設置された中国構造物を調査しようとしたが、中国海警(コーストガード)によって阻止された。
・またAIS(自動識別システム)データの分析により、2022年から2024年にかけて、韓国側の船舶が複数回にわたり中国構造物へ接近しており、その際にはしばしば韓国の海洋警察が随行していたことから、長年にわたる継続的な監視と懸念が示唆されている。
・入手可能な情報からは、これらの構造物は本来は養殖に焦点を当てていると見られるが、南シナ海における中国の実績を踏まえると、それらが「二重用途(dual-use:デュアルユース)」であり、中国の徐々に進む管轄権拡張の手段として使われる懸念も根拠のないものではない。
南シナ海では、当初は気象観測所だった施設が後に主要な軍事拠点へと発展した事例がある。
・『Beyond Parallel』およびアジア海洋透明性イニシアチブ(Asia Maritime Transparency Initiative)による商業衛星画像とAISデータの分析は、PMZ内で公に知られている中国の鋼鉄構造物に関して、開発・配備・現在の状況に至るまでの包括的なタイムラインを初めて明らかにした。
⇒参照・引用元:『Beyond Parallel』公式サイト「」
中国側は、いけしゃあしゃあと魚の養殖用施設と述べているのですが、それ以外の用途に使えるよう拡張される可能性について『Beyond Parallel』は言及しています。
また、2025年02月に韓国側が構造物について調査しようとしたところ、中国側海警の船舶に阻止されたことを確認しました。
南シナ海の例を鑑みれば、これが軍事拠点へと発展するためのものであることを誰も否定できません。中国では民間と軍事の切り分けはないのです。
この『Beyond Parallel』のリポートを基にした記事を『朝鮮日報』も出していますが、その記事の結びは以下のようになっています。
(前略)
CSIS(戦略国際問題研究所)は、「中国による黄海の構造物活動は、南シナ海など他の地域で中国が見せてきたグレーゾーン戦術のパターンと一致する」と述べ、「養殖や漁業活動を装い、段階的に管轄権の主張を行っていく可能性についての懸念が提起されている」と分析した。韓国政府は、黄海の領有権問題が『共に民主党』と『国民の力』の両党が支持する超党派的な課題であることから、積極的に対応していく方針であると伝えられている。
超党派的に対応できる課題なので、中国に積極的に対応していく方針――と書いています。
「中国に謝謝」な李在明(イ・ジェミョン)政府がそんことできるでしょうか。
対抗しないのであれば、黄海における権益はどんどん中国に削られていくでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)