【全文和訳】『韓国銀行』新総裁、職員向け最初の挨拶。

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2026年04月21日、『韓国銀行』の総裁に申鉉松(シン・ヒョンソン)さんが新たに着任しました。申鉉松(シン・ヒョンソン)新総裁がどのような人物かを知るためにご紹介しておきます。

申鉉松(シン・ヒョンソン)さんが着任に当たり、職員に対してどのような挨拶を行ったのか、『韓国銀行』が公表したものを以下に全文和訳します。

『韓国銀行』の役職員の皆さま、こんにちは。

本日、私は『韓国銀行』総裁に任命され、この場に立つこととなりました。

長きにわたり海外の学界や国際機関で働いてまいりましたが、『韓国銀行』とわが国の経済に献身する機会を得られたことは、この上ない光栄であると同時に、私に課せられた責務を思うと、重い責任感がのしかかってきます。

まず、国家経済の発展のために献身されてきた総裁各位と職員の皆さま、そして金融政策委員会の委員の皆さまに感謝申し上げます。特に、過去4年間、厳しい国内外の環境の中でわが国の経済の安定を維持するために尽力され、『韓国銀行』の地位を高められたイ・チャンヨン総裁に、感謝と敬意を表します。

職員の皆さま、現在、わが国の経済が直面している国内外の環境は決して楽観できるものではありません。

中東戦争以降、国際原油価格の上昇により物価の上方圧力と景気の下方圧力が同時に増大し、金融市場の高い変動性と金融不均衡の累積リスクも続いています。

より長い視点で見れば、今日の世界経済秩序は地政学的対立とAI技術革命により、大転換の時期を迎えています。

関税政策によって引き起こされた通商摩擦が貿易構造の再編へとつながっており、中東地域の緊張は再びエネルギー危機を高めています。

AI技術はここ数年で産業の地勢を変え、今後も経済成長や生産性、労働市場など経済全般に大きな影響を与えるでしょう。

国内においても、人口構造の変化、二極化の深刻化、不動産市場と家計債務の問題により、わが国の経済の成長原動力が弱まっています。

こうした構造的な問題が世界経済の変化と相まって、どのように展開していくか、予断を許さない状況です。

役職員の皆さま、このような転換期には、中央銀行の役割とは何かを改めて問わなければなりません。

振り返ってみれば、中央銀行の歴史は、経済環境の変化に応じ絶えず進化してきた過程でした。

17世紀のヨーロッパの都市国家を中心に形成された預金銀行は、各種の金属貨幣が乱立した状況下で、公信力のある紙幣の発行と決済を通じて、貿易取引と貨幣への信頼を構築する中心的な役割を果たし、今日の中央銀行の前身であると言えます。

その後、20世紀初頭の大恐慌や70年代のスタグフレーションを経て、中央銀行は物価と成長の安定を図るマクロ経済運営の中心軸として定着し、グローバル金融危機以降は金融安定が重要な責務として加わりました。

このような中央銀行の変遷は、確立された理論に従った結果ではなく、経験が理論へとつながる過程でした。今日私たちが直面している課題もまた、実践を通じて答えを見つけ、新たな理論を紡ぎ出していくべき課題です。

まさにこの点において、今後4年間、重点を置いて推進していく4つの課題についてお話ししたいと思います。

まず、中東戦争による供給ショックで物価と成長経路の不確実性が一層高まっただけに、慎重かつ柔軟な金融政策運営を通じて、物価安定と金融安定を図っていかなければなりません。

これと共に、金融政策の有効性を高めるための努力も継続してまいります。政策変数間の複雑な相反関係を緩和するために政策手段を再点検し、政府とは必要な部分について政策連携を図って参ります。

併せて、市場との双方向のコミュニケーションを強化しつつ、我が国の実情に合ったコミュニケーション策を今後も模索して参ります。

第二に、金融安定についても新たな視点が必要です。

今日の金融市場では、銀行と非銀行、国内と海外部門間の境界が急速に崩れつつあり、資産市場とも密接に結びつきながら、実体経済に及ぼす波及力が一層大きくなっています。

従来の枠組みだけでは、金融システムのリスクを十分に把握し、対応することが難しくなりました。

これに伴い、既存の健全性指標に加え、市場価格指標の動きをより積極的に活用し、早期警戒機能を強化していきます。

また、非銀行部門の拡大や市場間の連携性強化を考慮し、非銀行部門に対する情報アクセスを改善し、金融機関のオフバランス取引や非伝統的金融商品などへ分析の範囲を拡大する必要があります。

これを踏まえ、中央銀行の金融安定役割を強化できる方策について、関係機関と共に議論を進めて参ります。

第三に、国際化・デジタル化された金融環境において、通貨の信頼と決済の安定性を守り抜くことも、中央銀行の時代的責務です。

ウォンの国際化は、わが国の経済の地位に見合った通貨インフラを整備していく重要な課題です。政府と共に外国為替市場の24時間取引を推進し、域外ウォン決済システムを構築して外国為替取引のアクセス性と安定性を国際基準に合わせて
改善していきます。

これはウォンベースの資本取引と実物取引を促進し、ウォンの国際的地位を高め、外国為替市場の安定的な発展にも寄与するでしょう。

併せて、デジタル金融革新に対応し、未来の通貨制度の設計にも一歩先んじて準備を進めていかなければなりません。

プロジェクト・ハンガン第2段階事業を通じてCBDCと預金トークンの活用度を高め、アゴラ・プロジェクトなどの国際協力を通じて、デジタル決済環境においてもウォンの地位を高めていきます。

このようなウォンの国際化と通貨制度の革新が金融安定を阻害しないためには安全装置が必要であるだけに、変化した環境に適したマクロプルーデンス体制について議論を進めていきます。

このように、ウォンの国際化と決済・支払いの革新、マクロプルーデンス体制が「三本柱」を成し、相乗効果を生み出せるよう、政府と共に努力して参ります。

第四に、わが国の経済の構造改革課題についても、中央銀行が積極的な役割を果たしていく必要があります。

先ほど申し上げた様々な構造的問題は、金融政策運営の条件を形成する核心的な変数です。経済構造が変化し、経済現実と経済主体の認識との間に乖離が生じた場合、金融政策の波及経路にまで影響を及ぼす可能性があります。

こうした点から、私は構造的要因が金融政策とは別の領域であるではなく、金融政策運営の重要な一部であると考えています。

今後も『韓国銀行』が、こうした課題に対する深い研究と政策提言を継続することで、わが国経済が望ましい方向へ進むことに寄与して参ります。

役職員の皆さま、先ほど申し上げた四つの課題は、どれ一つとして容易なものはありませんが、『韓国銀行』が積み重ねてきた力量と経験、そして役職員全員が力を合わせれば、十分に乗り越えられると確信しています。

これらの課題が成果につながるためには、組織の運営方式もそれに合わせて変わらなければなりません。

これに関連して、いくつかお話ししたいと思います。

まず、私は皆さま一人ひとりの能力が十分に発揮される環境づくりに力を注ぎます。『韓国銀行』の地位が高まる過程で、構成員一人ひとりも共に成長していく必要があります。

大きな組織の中の比較的小さな個人ではなく、大きな個人が集まってより大きな組織を作れるよう努力いたします。

そのために、調査研究や政策、現場業務や管理など全部門にわたり成長の機会を幅広く提供し、妥当な待遇が裏付けられるよう、組織文化と内部経営の改善に絶えず尽力いたします。

次に、私は『韓国銀行』内の各部門が境界を取り払い、有機的に動くことを望みます。今日、実体経済と金融、国内と海外経済は互いに密接に連動して動いているため、職員一人ひとりが自身の領域に深い専門性を持つと同時に、他の領域に対する理解を広げ、総合的な視点を備えることが重要です。

併せて、調査研究と政策は互いに補完し合いながら共に深まっていく必要があります。現実の政策課題から生まれた問いが研究へとつながり、その成果が再び政策の説得力を裏付ける好循環が定着するよう尽力して参ります。

また、デジタル技術の活用度を高め、組織の生産性を向上させることも、先送りできない課題です。

業務方式そのものの変化がなければ、有意義な生産性向上は期待し難いというのが国内外の専門家たちの共通した見解です。

したがって、データ体系、人材運用、情報共有など、組織運営全般にわたって改善の余地はないか、皆さまと共に探っていきたいと思います。

最後に、『韓国銀行』が国際社会の議論により積極的に参加し、貢献する組織へと進んでいきたいと考えています。今日、韓国はK-カルチャーだけでなく、K-ドットプロットなど、『韓国銀行』の政策的な経験の面でも海外から注目されています。

私たちが蓄積してきた研究と政策経験が、BISやIMFをはじめとする国際的な議論において有意義な貢献につながるよう、国内外の議論形成に積極的に参加する場を設けていきます。これは国際社会に貢献する道であると同時に、わが国の経済の解決策を世界の中で見出す通路となるでしょう。

『韓国銀行』の役職員の皆さま、現在、わが国経済は不確実性と変化の渦中にあり、解決すべき課題も山積しています。『韓国銀行』が信頼の中心としてその役割を果たすならば、わが国経済が直面する困難を乗り越える上で大きな力となるでしょう。

そのためには、役職員の皆さま一人ひとりの知恵と協力にお願いいたします。

私も皆さまと共に最善を尽くして参ります。

ありがとうございます。

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「제 목 : 신현송 한국은행 총재 취임사」

最後段に出てくる「K-ドットプロット」については、説明が必要でしょう。

韓国版の「Dot Plot(ドットプロット)」を指す非公式・通称的な呼び方です。「ドットプロット」というのは、金融に詳しい方ならご存じでしょうが、そもそもは『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)が使っている手法です。

『FOMC』(Federal Open Market Committeeの略:連邦公開市場委員会)の参加者が将来の政策金利の見通しをドット(点)でプロットして示します。早い話が「各メンバーが、将来どの金利を想定しているか」を可視化したものです。

これの韓国版を「K-ドットプロット」と呼称しているのです。

申鉉松(シン・ヒョンソン)さんは「K-カルチャー」と「K-ドットプロット」を並列に扱っていますが、本当に「K-ドットプロット」は世界的に注目されているのでしょうか(もちろん『韓国銀行』の職員相手のスピーチではありますけれども)。

不思議なことを言う人だなあ……という印象を受けました。

韓国・李在明が次期『韓国銀行』総裁に『BIS』現職を指名。
2026年04月20日に現『韓国銀行』の総裁である李昌鏞(イ・チャンヨン)さんの任期が切れます。次の総裁が誰になるのか?―は注目ポイントでしたが、2026年03月22日、韓国大統領に成り上がった李在明(イ・ジェミョン)さんが次期『韓国銀行』...

先の記事でご紹介しましたが、申鉉松(シン・ヒョンソン)さんは、学者畑上がりの人で、学者としての専門は、金融システムの不安定化、レバレッジ、流動性危機、国際資本移動、マクロプルーデンス政策です。

(吉田ハンチング@dcp)

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