アメリカ合衆国と中国による通商協議が終わりましたが、いまだに両国から合意された事項についての発表がありません。出てくるのは「協議を続けることの有用性について認識は一致している」といった至極当然とも思えるものだけです。
つまり「知的財産権の保護」「技術移転の強要」といった、合衆国が「構造的問題」としている点については全く進展がないわけです。合衆国は、中国が構造問題にまで踏み込んで対処することを約束しなければ圧力を緩めないでしょう。ただ、「中国製造2025」を掲げて自国を先進国並の製造大国にしたい中国としては、そういった約束はできかねます。
交渉が進展しない一方で、合衆国では中国の技術盗用を脅威と考える超党派の議員によって「対策を講じる機関」の設立が模索されています。
中国の技術泥棒を許すな!
01月04日、共和党のマルコ・ルビオ議員(Marco Antonio Rubio)と民主党のマーク・ワーナー議員(Mark Robert Warner)は上院にその対策機関の設置についての法案(bill)を提出しました。その機関は「Office of Critical Technologiesand Security」(重要技術安全保障局)という仮称で、ホワイトハウス内に設置するとなっています。つまり、指揮系統上は大統領の直属機関。その使命は合衆国に安全保障上の脅威をもたらすかもしれない先進技術の流出を監視・抑止することです。ワーナー議員は、
We need a whole-of-government technology strategy to protect U.S. competitiveness in emerging and dual-use technologies and address the Chinese threat by combating technology transfer from the United States.
我々は、合衆国の競争力、この競争力は新しくつくられる技術とデュアルユース技術(軍事用、民生用の両方に使える技術という意味)に支えられているのだが、これを保護するために政府一丸となった技術戦略を必要としている。合衆国からの技術移転を阻止することによって中国の脅威に対処するためにも必要なのだ。
と声明を発表しています。
この法案には、これ以上の中国の技術盗用を見過ごすわけにはいかない、という合衆国の危機感が表れているといえるでしょう。合衆国と中国の戦いの本質は、貿易の不均衡を正すことにあるのではなく、知的財産を盗む中国の泥棒根性を修正することにあるのです。
⇒引用元:『Mark R.Warner』「Warner, Rubio Introduce Bipartisan Legislation to Combat Technology Threats From China」
https://www.warner.senate.gov/public/index.cfm/2019/1/warner-rubio-introduce-bipartisan-legislation-to-combat-technology-threats-from-china
⇒法案文面参照元:『ja.scribd.com』「Office of Critical Technology & Security」
https://ja.scribd.com/document/396686750/Office-of-Critical-Technology-Security
(柏ケミカル@dcp)