韓国「米韓通貨スワップの代わりの契約で600億ドル確保!」それは「明日返せよ」という超短期のドル借りです

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2020年03月19日にアメリカ合衆国『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)が発表した臨時のドル流動性スワップ(韓国での呼称は「米韓通貨スワップ」)が、2021年12月31日に終了します。

韓国はこれによって、最も頼りになる「緊急時用のドル供給元」を失います。

ドルの供給元を確保しなければなりません。そのために……という話です。

2021年12月23日、『韓国銀行』は「韓国銀行、米連邦のFIMA Repo Facility(FIMAレポファシリティー)利用可能」というプレスリリースを出しました。

以下です(面倒くさい方は飛ばしても大丈夫です)。

<<以下プレスリリースの和訳>>
タイトル:韓国銀行、合衆国準備制度のFIMA Repo Facilityを利用可能

□韓国銀行は『FRB』が導入した常設(スタンディング)FIMA Repo Facility を必要に応じて利用することに合意した(現地時間12月21日)

FIMA(Foreign and International Monetary Authorities)Repo Facility:連銀が外国中央銀行などが保有している米国債を買い戻し条件付きで買い入れ、外国中央銀行などにドルを供給する制度であり、コロナ19パンデミックに対応して2020年03月31日を一時的に導入し、2021年07月27日これを常設化

o同制度を通じて、『韓国銀行』は保有している適格証券を活用して、連銀からドル資金を必要に応じて即時調達できるようになる

o取引限度は600億ドルで、調達金利は年0.25%
※「米連盟の常設FIMA Repo Facility運営方案」は<付録>参照

(後略)

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「韓国銀行、米連邦のFIMA Repo Facility利用可能」

韓国へのドル供給に関することですので、韓国メディアも報じています。報道を確認してみましょう。韓国メディア『毎日経済』の記事から一部を以下に引用します。

韓国と合衆国の600億ドル規模の通貨スワップ契約が来る31日終了する中、韓国銀行が『FRB』が外国通貨当局対象に導入した常設のFIMAレポ制度(FIMA Repo Facility)を通じて必要時の流動性確保に利用することに合意した。

(中略)

韓銀は米連盟と21日(現地時間)が制度を利用することに合意したと23日明らかにした。

チェ・ヒ『韓国銀行』国際総括チーム長は「今月末に終了する600億ドル規模の米韓通貨スワップを補完する性格を持っている」と趣旨を説明した。

これにより、『韓国銀行』は保有中の適格証券を活用して米連銀から米ドル資金を必要に応じて即時調達できるようになった。

これは米国債を担保でドル流動性を確保する方式で、調達できる規模は上限600億ドルで、金利は0.25%だ。

適格対象証券は、合衆国財務省が発行する財政証券(T-bill)、中長期国債(T-Note、T-Bond)および物価連動国債(TIPS)である。取引期間は満期が1日の翌日であり、延長も可能である。
(後略)

⇒参照・引用元:『毎日経済』「『韓・米通貨スワップ補完』韓銀、600億ドル規模の米国債担保ドル流動性確保」

『韓国銀行』のチーム長は「今月末に終了する600億ドル規模の米韓通貨スワップを補完する性格を持っている」と述べています。

「FIMA レポファシリティー」とは?

FIMA レポファシリティー」は、簡単にいえば「FIMAアカウント」ホルダーのための「超短期のドル貸しシステム」です。

世界的にドルが枯渇して大変なことになった2020年03月31日に、まずはドルを供給するための臨時のシステムとして作られました(『FRB』が9つの中央銀行と連銀との臨時のスワップラインを結ぶと発表したのが03月19日)。

FIMAは「Foreign and International Monetary Authorities」の略です。

FIMAのアカウントを持つのは、各国の中央銀行およびNY連邦準備銀行に口座を持つ国際通貨当局。これらはいわばメンバーで、「FIMAアカウント」ホルダーです。

FIMAアカウントホルダーが「自身の持つ合衆国公債」を、『FRB』と「後で買い戻す」という契約を結んだ後に、ドルに換えることができるというシステムです(システム・オープン・マーケット・アカウント(略称:SOMA)に売却してドルを得ます:面倒くさい人は飛ばしてください)。

簡単にいえば、保有する合衆国公債を一時的に現金のドルに換えられるわけです。

ただし、後で買い戻さなければならず、また借りられる期限は基本「一晩」です(ロールオーバーはできます)。さらに当然ながら金利も付きます。

この臨時の「FIMA レポファシリティー」が2021年07月28日に「常設となる」と発表されました。


↑『FRB』のプレスリリースです。

⇒参照・引用元:『FRB』公式サイト「Standing FIMA Repurchase Agreement Resolution」

これは「異常事態」に使うもの

というわけで、韓国が利用可能になったと発表したのは、常設化された「FIMA レポファシリティー」です。上限600億ドルと金額はドル流動性スワップと同じですが、自分の保有する合衆国公債をカタにドルを借りるシステムです。

しかし、「明日返せ!」というものなので、もう本当にどうにも仕方がないという時に使うことになります。2020年に韓国が利用したドル流動性スワップのように「7日後に返済します」「83日後に返します」では済みません。

本当の危機時には確かに安全弁になるでしょうから、韓国にとってはよいことでしょう(「FIMA レポファシリティー」を使うところまで追い込まれないようにしたいものです)。

また、日本にとってもよいことです。日韓通貨スワップを求められたら「困ったら『FIMA レポファシリティー』を使えばいいじゃないか」と言えますので。

SOMAは「System Open Market Account」の略。日本語では「公開市場操作用口座」「制度公開市場勘定」「システム公開市場勘定」などと訳されます。オペレーション(市場操作)を通じて取得した資産を管理するための口座です。

IOERは「interest on excess reserves rate」の略。義務付けられた準備預金を超過した預入金額に対して付与される金利。

(吉田ハンチング@dcp)

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