なぜ韓国には『サムスン銀行』がないのか?

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韓国の財閥はかつて手広くさまさまな事業を手掛けていました。タコ足式に事業を拡大し、あれもこれもと新しい事業分野に進出していたのです。

今でもその名残があって、韓国を代表する企業『サムスン電子』ですが、サムスンと名の付く企業はたくさんあります。造船最大手Top3の一角である『サムスン重工業』は日本でも有名ですね。金融方面では『サムスン証券』という会社はあります。

読者の皆さんは不思議に思われないでしょうか。

このように手広く事業を拡大してきたくせに、現在に至るも韓国に『サムスン銀行』はありません。同様に『現代銀行』もありませんし、『LG銀行』『SK銀行』もないのです。

なぜでしょうか?

産業資本の議決権は「4%まで」と決まっている

その理由は、法的に制限されているためです。

韓国の現行銀行法では、第15条で同一人の株式保有限度などによって「産業資本の銀行持分保有を最高10%(地方銀行は15%)に制限」しています。

議決権は4%以内に制限されており、4%超の過保有持分については金融委員会に報告しなければなりません。

つまり、事実上金融委員会の承認なしには4%までしか保有できません。

法的にはこうなっているのですが、なぜこのように法的な掣肘を受けているのかについては韓国の歴史、経済発展に関連しています。

韓国に『サムスン証券』はあっても『サムスン銀行』がない理由は、簡単にいえば韓国財閥の力を縛るためです。政府が歯止めをかけたのです。

財閥を締め上げるためにお金の出所「銀行」を絞った

韓国の財閥はそもそも政府と結託して成長しました。悪くいうと「癒着」です。

第二次世界大戦が終わって、日本が朝鮮半島から手を引いたとき、日本が残していった資産が「敵性資産」ということで、最初はアメリカ合衆国軍(軍政でしたから)に接収され、次に韓国政府の手に渡りました。

韓国政府には当初何も資産がありませんでしたから、これを元手に経済を興すことになります。

そのため、野心ある企業家は政府にすり寄り、多額の政治献金をすることで敵性資産の払い下げを狙います。

「特恵」を得ることができた企業はいち早く大きくなることができました。

しかし、1950年に朝鮮戦争が勃発。半島の南半分も大きな痛手を受け、工場などは灰燼に帰しました。それでも政治にすり寄れば大きな恩恵を受けられることに変わりはありませんでした。

「日本が残した資産」の代わりになったのは「アメリカ合衆国からの援助」です。政治家にすりよって献金することでこの援助を優先的に配分してもらえるという特恵が得られたのです。

「合衆国からの援助」が終わった後は「融資」が特恵になりました。

政府に気に入ってもらえると「低利で融資を受けられる」となったのです。政府は銀行業に制限を課しました。「大株主の持ち株比率を4%以下」と銀行法で制限したのです。

銀行は政府が押さえていました。特に韓国経済の規模が小さかった時代には、政府のいいなりに融資を行う銀行から資金を引き出すためには、政府に気に入られる他なかったのです。

これが韓国での政府・財閥の癒着が深まる理由でした。

また、逆にそのせいで政権が変わるたびに財閥の浮沈が起こりました。しかし、韓国政府は融資を行う銀行をコントロールすることで財閥を管理することが可能としました。資金が融資されなければ「おしまい」だからです。

韓国政府は銀行業を財閥企業に行わせないようにして融資の権限を握り、財閥を管理下に置くことを企図したのです。

政権と財閥の癒着が根っこにある!

浅学非才の筆者がいっても信用されないかもしれませんので、念のために池東旭先生の著作から以下に引用してみます。

(前略)
韓国財閥の企業支配構造(コーポレート・ガバナンス)の特徴は閉鎖的同族経営オーナーの独断専行だ。政治における独裁支配に対応した企業支配形態である。

だから財閥のアキレス腱は銀行だ。

政権は財閥と癒着した。

だが財閥に銀行だけは渡さなかった。

その理由は財閥が銀行を所有すれば財閥の私金庫になるからだ。

政権が財閥をコントロールできる武器は銀行だったからだ。政権に睨まれた財閥は貸し出しを回収されればひとたまりもない。

七〇年代聯合鉄鋼、八〇年代国際商事グループなど、財閥が空中分解した。

権力者の不興をかい融資が中断されたせいだ。「財閥殺すに刃物は要らぬ。銀行貸し出し止めりゃよい」である。

財閥権力者は巨額の献金をした。保険でもあり先行投資でもあった。

現代財閥オーナー鄭周永は歴代の政権にニ〇〇~三〇〇億ウォン献金したと明言した。

大統領経験者全斗煥、盧泰愚の裁判で両人は在職中数千億ウォンを財閥からとったことがバレた。

(中略)

政府は財閥の銀行支配を阻止するため1人当たり持ち株上限を4%に制限した。
(後略)

⇒参照・引用元:『コリアクライシス』著:池東旭,時事通信社,1997年07月10日 発行,pp51-53

というような次第で、韓国の財閥企業は銀行を所有することができず、保険、証券、総合金融会社などのノンバンクを設立することになりました。

そのため、今に至るも韓国には『サムスン証券』があっても『サムスン銀行』はないのです。

(吉田ハンチング@dcp)

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