アメリカ合衆国のトランプ前大統領は、韓国と文在寅前大統領を冷遇しました。
冷遇には理由があって、北朝鮮との仲を取り持ちますよとシャシャリ出る割には、合衆国に正確な情報を流さず、トランプ大統領がいざ北朝鮮の金正恩総書記と会ってみたら、「お前(文在寅)が言っていた話と違うじゃないか」――となったためです。
文前大統領に幻滅したのは、金正恩総書記の側も同じで、頭にきて「韓国は仲介者面すんな!」と公に声明で怒鳴りつけたほどです。
文在寅大統領は、韓国に自由がなくなったとしても、「とにかく南北朝鮮を統一させたい」という人物なので、コウモリのように合衆国・北朝鮮の間を飛び回り、なんとか合衆国軍を朝鮮半島から撤退させるべく努力を重ねました。
文在寅大統領が目指したものは、北朝鮮の非核化ではありません。南北統一であり、合衆国軍の撤退です。北朝鮮の保有する核は「民族の核」として温存するつもりであったと推測されます。
そのために「朝鮮戦争の終結宣言」を実現しようと、合衆国・中国・北朝鮮を相手に駆けずり回り、バチカンにまで行き、失笑を買ったのです。
傑作なのは、トランプ大統領自身も合衆国軍の撤退に前向きで本気だったことです。もちろんトランプ大統領の場合には、国際情勢からではなく、金勘定からの判断です。
つまり、韓国の文在寅大統領と合衆国のトランプ大統領は、奇しくも「合衆国軍を韓国から撤退させる」という点においては一致していたのです。
歴史の皮肉という他ありません。
2022年10月04日、Maggie Haberman(マギー・ハーバーマン)さんの『Confidence Man』という本が出ました。
著者のハーバーマンさんは、2015年に『ニューヨークタイムズ』に入社したジャーナリストで、この本はトランプ政権の内幕について取材した、いわば暴露本といえます。
ちなみに「confidence man」は「詐欺師」という意味です。
合衆国の中間選挙寸前のこの時期に、このような本が出るのも興味深いですが、この中に、トランプ大統領がいかに韓国から手を引きたがっていたのかを明らかにした部分があります。
注目は以下の部分です。
(前略)
しかし、トランプ氏を怒らせたのは在韓米軍基地の議論だった。ある政府関係者は「大統領閣下、韓国は韓国を守るために重要ですが、もっと広い戦略的機能も持っているのです」と述べた。
この点を説明するために、ある補佐官は、韓国があれば中国での軍事的な動きに関する情報は6秒未満で素早くキャッチできるが、アメリカ人が次に近いアラスカの施設から監視しなければならないとしたら2分かかると指摘した。
「それはいいことだ」と、トランプ氏は皮肉った。
そして、別のデータポイントに対しては「そんなことはどうでもいい」と言い放った。
彼は、合衆国が世界中に拡大しすぎたと主張した。
これらの基地がなくても「大丈夫だ」と彼は言った。
(後略)⇒参照・引用元:『Confidence Man: The Making of Donald Trump and the Breaking of America』著:Maggie Haberman,Penguin Press,2022年10月04日,p.310(Kindle版のページ数)
※強調文字、赤アンダーラインは引用者による
ハーバーマンさんの調査と著述が正しいのであれば、トランプ大統領は完全に韓国からバイバイするつもりでした。
韓国に合衆国軍の施設があるおかげで、中国に何か動きがあれば6秒未満で把握できるのに(これがまず驚きです)、アラスカからだと2分になるのも別に構わなかったのです――トランプ大統領にとっては。
韓国の安全保障は、文在寅大統領とトランプ大統領の共作によって大きく後退するところだったわけです。
(吉田ハンチング@dcp)