韓国の最低賃金委員会の件です。
2023年06月30日までに「2024年度の最低賃金」を決定しなければならなかったのですが、「26.9%アップ:最低賃金1万2,210ウォン」という無茶苦茶な要求を突きつけた労働者側と、「現状の9,620ウォンで凍結」を提案した経営者側の溝は埋まりませんでした。
↑「最低賃金委員会」が時間切れになった様子を報じるYouTube『KBSニュース』公式チャンネル
ただ、06月27日に怒りに任せて委員会から退席した労働者側委員は、この会議(第9次委員会)には戻り、最後まで付き合っています。
「最低賃金を上げると雇用は減少する」は怪談?
しかし、労使の要求金額には隔たりが大きく、とても埋まるような情勢ではありませんでした。労働者側は、第9次会議に当たり、以下のようなプレスリリースを出しています。
一応和訳全文を貼りますが、大変な長文ですので面倒な方は飛ばしていただいても大丈夫です。
↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください/スクリーンショット[プレスリリース] 最低賃金委員会第9回全体会議
最低賃金委員会第9回全員会議
第8回全会議で労働者委員が退席したため、労使動員原則は保障されるべきであり、35年間9回だけ遵守された法定期限の遵守を根拠に2024年適用の最低賃金水準の議論が早急に審議されてはならない。
プラットフォーム・フリーランスをはじめとする労働者の最低賃金適用方案、算入範囲拡大による問題、性別影響評価など、最低賃金委員会が責任を持って議論すべき議題であり、これについて公益委員も方案を議論してほしいと要請。
最近2年間、最低賃金決定に使用されたいわゆる「公益委員算式」は、低賃金解消と所得分配構造の改善という最低賃金制度の本来の目的ではなく、低賃金構造と賃金格差がそのまま維持される問題を引き起こす。
今日から始まる最低賃金水準の議論で、公益委員は、昨年10月に欧州連合が採択した最低賃金に関する欧州指令、G7雇用労働大臣会議で採択したG7行動計画と共に、世界的に不平等解消と低賃金労働者の生活安定、男女賃金格差解消のための最低賃金の大幅引き上げの基調と傾向を反映しなければならない。
財界が主張する最低賃金引き上げによる雇用危機論は怪談に過ぎず、各種統計や学術論文などで根拠がないことが明らかになり、民主労総と様々な団体のキャンペーン、面談、アンケートなどさまざまな活動の結果などから確認されるように、来年度の最低賃金は1万2千ウォンでなければならない。
#民主労組パク・ヒウン副委員長の全員会議での発言
前回の第8回全員会議で、労働者委員は最低賃金委員会の独立性、公平性の保障とともに、労働者委員1人に対する雇用労働部の不当な介入を糾弾して退場しました。
まだこの問題は残っており、労使同数の原則を保障することを要求します。また、2024年度の最低賃金審議が拙速に議論されないように十分な審議日程を保障しなければなりません。
法定審議期限の遵守は、1988年の制度導入以来、たった9回しか維持されていません。
これは、最低賃金が社会的に及ぼす影響力が大きく、労使間に争点が多いため、法定審議期限を超えながら継続的に議論された結果です。過去8回目の会議で使用者委員の凍結案を含む最初の要求案が提出され、2024年の最低賃金水準の議論は今日から本格的に始まります。
また、プラットフォーム・フリーランスをはじめとする労働者の最低賃金適用方案、算入範囲拡大による問題、性別影響評価など、最低賃金委員会が責任を持って議論すべき議題です。 これについて、公益委員の皆さんにも方案を議論していただくようお願いします。
また、最低賃金委員会の公益委員が2年間使用した算式に関して、改めて問題を提起します。
いわゆる「公益委員の算式」は、最低賃金法で明示されている生計費、類似労働者賃金、労働生産性、所得分配率への考慮ではなく、国民経済の生産性増加率という経済的基準だけで最低賃金を決めることになります。
これは、低賃金解消と所得分配構造の改善という最低賃金制度の本来の目的ではなく、低賃金構造と賃金格差がそのまま維持されるという問題が発生します。
この算式を使用した場合、予測される来年度の最低賃金の引き上げ率は、今やすべての国民が知っているほどです。最低賃金委員会の役割と制度を無意味にすることでもあります。
昨年10月、欧州連合では適正最低賃金に関する欧州指令を採択し、法定最低賃金を設定する際に考慮すべき4つの基準を提示しました。
生計費を考慮した法定最低賃金の購買力、
賃金の一般的な水準と分配、
賃金増加率、
長期的な国家の生産性レベルと発展です。
また、昨年4月に日本で開かれたG7労働雇用大臣会議で「労働者と企業が労働参加を改善し、不平等を減らすための措置を実施して良質の雇用を促進するよう支援する」、「労働者のための適切な賃金を奨励する」などのG7行動計画を採択しました。
これと関連し、ILO事務総長は、実質所得の不平等な分配と高いインフレによる不平等を予防し、減らすためには良質の仕事を通じて仕事への没頭度を高めることが必要であり、特に数百万人の低賃金労働者に適切な賃金と報酬が保証されなければならず、法定または交渉された最低賃金は適切な生活水準を保証し、賃金の不平等を制限し、最貧困層の所得シェアを増やすことが核心であると述べました。
公益委員の皆さんも、最低賃金制度の趣旨とともに、このような国際的な議論と流れも最低賃金水準の議論に反映しなければならないと思います。
また、世界的に社会的不平等解消と低賃金労働者の生活安定、男女賃金格差解消のために最低賃金を大幅に引き上げるのが現在の流れです。
2023年の法定最低賃金を欧州連合21カ国の「全国最低賃金の平均引き上げ率」は12.36%で、イギリス、アメリカ、フランスなどは最低賃金を大幅に引き上げました。
日本では政府が率先して最優先の政策目標として物価上昇率を上回る賃金引き上げを奨励しました。
ところが、韓国だけが物価暴騰、経済危機の状況で労働者の賃金上昇は抑制させ、社会的不平等の解消ではなく、財閥、大企業中心の政策を展開しています。
最近、経総は政府に造船所に入る移民労働者の賃金削減を要求し、最低賃金の凍結を主張しています。
国際的な流れにも逆行し、反人権的に賃金搾取を通じた労働搾取の行為に糾弾せざるを得ません。
最低賃金引き上げは、経営界が主張するように雇用減少につながりません。
雇用に影響を与えないという研究結果が多くあります。
また、最低賃金が大幅に引き上げられた2018~2019年には、低賃金労働者の割合が大幅に減少し、賃金不平等も低賃金層の賃金を上昇させて縮小させたと分析されています。
家計所得と消費を重加価させ、長期的に景気回復と雇用にプラスの影響を与えると言われています。
過去4年間、物価上昇率にも及ばなかった最低賃金の引き上げは実質賃金の削減につながりました。
職場119が全国のサラリーマン1,000人余りにアンケート調査を行った結果、85.6%が物価上昇により賃金が削減されたと回答しました。
40.5%が来年度の最低賃金は1万2,000ウォン以上でなければならないと回答しました。
これを含めて77.6%が最低1万1,000ウォン以上でなければならないと回答しました。
社会的に給料を除いて全て上がった、今は賃金が上がる番であり、最低賃金を大幅に引き上げなければならないと言っています。
『民主労総』は今年上半期、尹錫悦(ユン・ソギョル)政府の労働組合弾圧の状況下でも、全国で最低賃金の大幅引き上げと皆のための最低賃金制度改善のため、低賃金労働者と直接対面し、アンケートをはじめとするキャンペーン、懇談会、決議大会、徒歩行進など、労働者、市民と会ってきました。
06月24日、ソウルでは1万人を超える労働者が集まり、声を上げました。
今日も大雨が予想される状況でも、民主労総の組合員は最低賃金引き上げを要求し、最低賃金委員会の前でカyンペーンを行う予定です。
また、来年度の最低賃金は1万2,000ウォン以上でなければならないという労働者たちの署名に7万6千人以上が参加し、今日、最低賃金委員長に渡します。公益委員の皆さんあ審議に参考にしてください。
⇒参照・引用元:「[보도자료] 최저임금위원회 제 9차 전원회의」
ご注目いただきたいのは、「最低賃金引き上げは、経営界が主張するように雇用減少につながりません」「怪談だ」という主張です。そのように主張する学説も多くある、としています。
学説はともかく、実際に前文在寅政権が2018年に最低賃金を一気に「16.4%」も上昇させ、雇用が激減したのをもう忘れたのでしょうか。
韓国は尋常ではないインフレに見舞われ、実質賃金が減少したのは事実です。これは『韓国銀行』も認めています。
しかし、インフレ率は低下傾向に入り、『韓国銀行』の予測が正しければ2023年末にはなんとか3%前半に抑え込めるはずです。
また、賃金には下方硬直性があっていったん上げると下げるのが容易ではない――という点を(恐らく意図的に)忘れています。
例えば10%のインフレだから給与を10%上げよう!となったとして――その後、インフレ率が下がったとしても給与をすぐ下げることなどできないのです。
決裂後はどうなる?
決裂したのでどうなるか?――ですが、07月03日(月)に「第10次 最低賃金委員会」が開催されることになりました。
一応ルール上は、労働者側委員がボイコットしていなかったとしれも議決はできるのですが、「拙速に決めてはならない」という認識で労使は一致しています。経営者側からしても強制的に議決したという非難は浴びたくない模様です。
「1万ウォンを超えるかどうか」など、注目される今回の最低賃金委員会。どのように決着するのかにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)