言われれば言われるほど不安になる――ということがあります。
2023年06月30日、韓国政府が史上初、「円建て」の外国為替平衡基金債券(略称「外平債」)を発行することを公表しました。
日本の投資家相手に、なにせ『ザ・ペニンシュラ東京』(下掲写真)でラウンドテーブルを開催していますので、いかに気合が入っていたかが分かります。
外平債はその名のとおり「為替介入するための資金」を集めるために発行する債券です。
日本の投資家に秋慶鎬(チュ・ギョンホ)副首相兼企画財政部長官がどのような説明を行ったのか、企画財政部のプレスリリースを見てみましょう。
秋長官の発言などを以下に引用します。
ラウンドテーブルの主な内容および投資家の反応
今回のイベントは、秋副総理の総括発言を皮切りに、キム・ソンウク国際経済管理官の韓国経済の現状と展望に関する発表の後、出席した日本投資家から質問を受け、秋副総理が直接回答する方式で行われた。
総括発言および発表の主な内容
まず、日韓両国は互いの強みを活用してシナジーを創出し、地政学的リスク、サプライチェーンの再編など、共通の課題に対して緊密な協力と連携を通じて共に対応していくことができる相互補完的な関係であることを説明した。
また、最近の両国政府間の関係改善が民間経済・金融協力につながることが重要であることを強調した。
特に、実物協力を支え、両国の金融産業・資本市場の発展を図るためには、長期間微々たるレベルに留まっていた金融協力を拡大することが重要であると述べ、そのための具体的な政策方策を紹介した。
まず、韓国政府は今年、史上初めて日本の機関投資家を対象に円貨建て外国為替平衡基金債を発行する計画であることを明らかにした。
これにより、日本の金融機関に優良な韓国物に対する投資機会を提供すると同時に、今後、韓国企業・金融機関の円建て債券の発行に弾みをつける役割を果たすと説明した。
また、アクセス性が高くリスク度の低い国債から相互投資が活性化されるよう、韓国政府と日本の主要投資家間の面談を定例化し、十分な情報を共有することを約束した。
相互投資を阻害してきた制度的要因も改善していくことを説明した。
外国人投資家登録制の廃止、国債統合口座開設、外国為替市場の対外開放など、資本・外国為替市場の構造改善努力を紹介し、今後、投資家の意見収集を経て、相互投資拡大のための追加改善課題を持続的に発掘していくことを明らかにした(これらの措置は例の「MSCI」の「先進国市場」分類に関わる:引用者注)。
最後に、韓国経済のファンダメンタルズと資本市場の収益性・安定性は非常に良好であることを強調した。
経済ファンダメンタルズ面では、最近の物価は3%台前半まで安定化し、主要国に比べて良好な流れであることに言及し、成長率も下半期にはグローバル半導体業況の改善などに支えられ、上半期比2倍以上反発し、来年も回復が加速することを強調した。
また、今年のKospi、Kosdaq指数の利回りは主要国の株価指数利回りを大きく上回っており、CDSプレミアムは下降傾向を示す中、安定的な外国人資金流入が維持されていることを説明した。
1.セクター別収益率(1.1~6.29%) : (コスダック)28.0(コスピス)14.6(S&P)14.5(ユーロストック)12.9(上海総合)3.0
2.CDSプレミアム(bp) : (’22末)53(’23.1末)41(02月末)45 (03月末)44(04月末)46(05月末)39 (06月29日)33
3.外国人資金の純流入(兆ウォン) :(’23.1)△0.4(02月)0.4(03月)0.9(04月)6.0(05月)14.2<01~05月>21.0
【主な質疑応答および日本投資家の反応】
質疑応答を通じて、秋副総理は輸出・貿易収支、サプライチェーンの再編、韓国政府の円建て債券発行など、日本投資家の主な関心事項に対する韓国政府の評価と対応策について説明した。
輸出・貿易収支の見通しについては、半導体業況の回復、中国発の需要改善、エネルギー価格の安定などで下半期に向けて黒字転換が予想されると説明した。
また、明らかな物価安定、史上最高の雇用率および最低の失業率、下半期の成長率回復の見通しなどを総合的に考慮すると、韓国のファンダメンタルズは非常に堅調であると強調した。
グローバルサプライチェーン再編に関しては、最近、日韓半導体サプライチェーンの協力が回復したことを高く評価し、今後も緊密に協力していくことを明らかにした。
また、サプライチェーン3法などの政策的努力と共に、安定的なサプライチェーンの確保のための経済外交的努力も継続すると言及した。
また、日本投資家が格付けが優秀な韓国政府が円貨建て外債を発行する場合、非常に魅力的な投資機会になると言及したことに対し、積極的な投資を呼びかけ、今後、優秀な国内企業の円建て債券の発行も拡大されるよう政策的努力をしていくことを説明した。
日本の投資家たちは、韓国と日本が互いに共存できるパートナーであることに積極的に共感していると述べた。
特に、ホワイトリストの復活、日韓通貨スワップの再開など政府レベルの関係改善が民間経済・金融協力にも大きなメッセージとして機能することを強調し、韓国政府の実質的な政策努力により、今後、両国間の相互投資が活性化すると評価した。
⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「추경호 경제부총리, 17년 만에 일본 라운드테이블 개최 및 엔화 외평채 발행 계획 발표」
ご注目いただきたいのは、「韓国企業・金融機関の円建て債券の発行に弾みをつける」です。
このプレスリリースから見るに、韓国政府は今回の外平債の発行を、韓国企業・金融機関の円建て債券発行の呼び水・先駆けにしたいようです。
「日本投資家が格付けが優秀な韓国政府が円貨建て外債を発行する場合、非常に魅力的な投資機会になると言及した」となっています。
韓国政府としては、外貨建て債券が発行するとしても、(政策金利が世界最低クラスなので)利子が少なくても済む日本で行いたいのです。
政府の外平債(現在では国債に統合されている)から始めて、企業、銀行へと発行主体を拡大していくことを目論んでいると見えます。
「お金がないのかしら」です。
また、韓国通貨危機時のように「日本資金の巻き戻しが始まったときドボン騒動を起こすのではあるまいな?」です。
思い出していただきたいのは、「貿易収支赤字から経常収支へと落ち込み、資金を外国からの融資でまかなう。それが返せなくなってデフォルト騒動を起こす」という一連のサイクルです。
「貿易収支赤字 ⇒ 経常収支赤字」はすでに現実のものになっています。
日本から巨額の資金流入を期待しているのだとしたら、償還できるんだろうな?まで考えていなければなりません。政府はともかく、韓国の企業・銀行には注意が必要です。
1997年、『IMF』に手を上げる直前、韓国政府は「韓国のファンダメンタルは非常に堅牢です」と言っていたのです。
これはウソでした。
(吉田ハンチング@dcp)