「外国為替平衡基金債券(がいこくかわせ へいこうききん さいけん)」は、先にご紹介した「通貨安定証券」と同じく、韓国経済について語るときに避けては通れないものです。
避けては通れないといっても、韓国経済の特徴を示す面白い点として語らずにはいられないといったところです。
「為替レートを安定させるための資金を調達する」ための国債
「外国為替平衡基金債券」は、韓国政府が発行する国債(国が発行する債券なので国債)です。「外国為替平衡基金債券」と漢字が10文字も続いて読むのも面倒でしょうから、以下は略称の「外平債」を用います。
この外平債は為替介入の原資を集めるために発行されます。
「外国為替平衡基金」という、為替介入を行うときの元手をプールしておく基金があります。発行された外平債の代金はここに集められるのです。
韓国・企画財政部(Ministry of Economy and Finance/財務省に当たります)の用語解説では以下のように説明しています。
外国為替平衡基金債券(Foreign Exchange Stabilization Bond)
通貨の対外価値の安定と、投機的外貨の流動による影響を緩和するために、政府が造成した資金が「外国為替平衡基金」であり、この基金の財源調達のために、政府が発行する債券を意味する。「外平債」とも呼ばれている。
ウォン建てと外貨建ての二つで発行することができる。
わが国は、ウォン建てのみ発行してきたが、国際通貨基金(IMF)の救済金融支援後の不足外貨調達のために外貨建て債券を発行した。海外市場で発行する場合の基準金利に発行国の信用格付けを考慮して加算金利が付く。
2003年11月からウォン建て外平債は国債に統合されて発行されており、国債発行代金は公的資金管理基金を経由して外国為替平衡基金に入ってくるように債券発行方法が変更された。政府の外貨建て外平債の発行は、政府部門の外貨調達機能となるだけでなく、外平債発行時の加算金利水準は、韓国企業の海外債券発行において基準金利として作用している。
⇒参照・引用元:『archive.today』「企画財政部・経済用語辞典」
https://archive.ph/sUFAd
※筆者(バカ)意訳。
為替介入用の資金を調達するのが目的と謳った「為替介入国債」というのは世界的に見ても珍品といえるでしょう(もちろん日本でも一般会計・特別会計の資金不足を補うなどのために発行される「国庫短期証券」(T-Bill)はあります)。
また、ドル建てでの発行も行っていますが、ドルが入手できた方が為替介入を行いやすいですね。ウォン安進行を止めるためには「ドル売り・ウォン買い」を行わなければなりませんが、そのためにはドルが必要です。ドル建てで外平債を発行し、プールしておけば「ドル売り・ウォン買い」に使えて便利です。
「外国為替平衡基金債券」の問題点
為替介入のためのお金を集めるいい手のように思えますが、債券ですのでこれはやはり借金です。購入者(入札者)に利子を払わなければなりません。為替介入資金を調達するために(利子まで付けて)借金をしているというのは、いいことであるはずがありません。
しかもウォン建てだけならまだしも、ドル建てでも発行しています。つまり、ドル建て外平債の利子の支払い、元本返済にドルが必要なわけで、ドルが潤沢にあればいいですが「ドルが枯渇」しており、ウォン安になっていたら「別途ドルを高いコストで調達しなければならない」という……なんというかバカバカしいことこの上ない状況になります。
しかし、韓国メディアでは以下のように「ドル建ての外平債を最低金利水準で発行できた」と喜んで報道したりしています。
企財部は当初10億ドル規模で外平債を発行する予定だったが、投資家の注文が6倍(60億ドル)以上集まり、発行規模を今年の限度である15億ドルまで増やし、金利も最初に提示した加算金利である5年物55bp、10年物75bpよりそれぞれ20~25bp低くできたと伝えた。
つまり、最低金利(付ける利子が低くても)でも買ってもらえるほど韓国の外平債には信頼があるのだ――といいたいのでしょうが、「いや、それ借金ですから!」なのです。しかも、「為替介入用の資金調達のための国債」という、世界的に「なにそれ」と思われるような債券を販売しているわけです。
(柏ケミカル@dcp)