Money1でもご紹介してきましたが、韓国にはNABO(National Assembly Budget Officeの略:国会予算政策処)という組織があります。2023
「国会法第22条の2によって「国家の予算決算・基金及び財政運用と関連する事項を研究分析・評価して議政活動を支援する」組織――となっています。
簡単にいうと、国の予算についてのお目付け役です。
議長の許可を得て行政府をはじめとする他の組織へ資料提出を要求でき、要求を受けた者は特別な事由のない限り、これに応じなければなりません。
そのため、表に出てこない資料などを入手し、国の財政を健全化するための重要な役割を果たすことができます。
このNABOが2023年度の予算およびその執行についての大部の報告書を出しているのですが、この中に重要な点があります。
予算より24兆も赤字を増やした!
Money1でもしつこくご紹介しているとおり、韓国政府は国税収入が減少しているのに支出を増やし、結果、政府財政が火の車となっています。
上掲のリポートではNABOが2023年について、以下のように概説しています。
2023年度予算は、
総収入:625.7兆ウォン
総支出:638.7兆ウォン規模で編成されました。
しかし、内外の経済環境の悪化などにより、国税収入が予算400.5兆ウォンに対し56.4兆ウォン不足の344.1兆ウォンしか収受されず、その結果、総収入決算規模が予算比51.8兆ウォン減の573.9兆ウォンにとどまる大規模な税収不足が発生しました。
総収入の減少に伴い、2023年の総支出も予算比28.0兆ウォン縮小された610.7兆ウォン水準にとどまり、総収入が総支出より大きく減少したため、管理財政収支の赤字も大幅に拡大し、予算比28.8兆ウォン悪化した87.0兆ウォンの赤字を記録しました。
政府は2023年09月、税収の再推計結果とともに税収不足の対応策を発表しましたが、歳入補正および支出調整などのための追加補正予算を編成せず、地方交付税・教育財政交付金の未交付および外国為替平衡基金の財源活用などで対応しました。
結局、2023年の場合、大規模な税収欠損により、限られた財源を効率的に活用する必要性がどの時よりも高い時期であったと言えます。
したがって、国会の決算審議過程において、政府財政運用全般に対する綿密な分析と評価が行われる必要があります。
特に、追加補正予算案を編成せずに政府自体で実施した税収欠損対応の適切性についても、国会レベルの重点的な審議が必要な状況です。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国 NABO』公式サイト「2023年度決算総括分析」
Money1でもご紹介したとおり、2023年度は大規模な収入の欠損が発生し、全く予算どおりにいきませんでした。
結局、支出を減らすなどで以下のとおりに着地しました。
2023年度
収入:573.9兆ウォン(-51.8兆ウォン)
支出:610.7兆ウォン(-28.0兆ウォン)
収支(収入 – 支出):-36.8兆ウォン(-23.8兆ウォン)※( )内は対前年同期比の増減
元から収支はマイナスの予算だったのですが(-13.0兆ウォン)、それよりも赤字が23.8兆ウォン膨らんだのです。約24兆ウォンですから、これは巨額です。
問題は「どうやって回したか?」です。
収入が足らないので外国為替平衡基金のお金を使った
国債を発行したのはもちろんですが、ご注目いただきたいのは、上掲のNABOのリポートにさらっと書いてある「外国為替平衡基金の財源活用」です。
「外国為替平衡基金」は、外国為替平衡基金債券(略称「外平債」)を発行することで入る外貨が積まれる基金です。外平債は全て外貨建てで発行されており、基金のお金は、外為市場を安定化するために使われます。
ところがNABOは、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は「財政が逼迫しているので」このお金に手を付けた――といっています。
外国為替平衡基金から20兆ウォンを使ったこと指摘し、「ドルに対応する資産である『金融性債務』を、今後税金で返済すべき『赤字性債務』に転換し、国家債務の質が悪化した」と評しました。
面倒くさい物言いで分かりにくいですが、つまりこういうことです。
外平債を発行して入手したドルは外平債に対応する負債(返済しなければならないので債務)ですが、これ財政の穴埋めに使うわけですからウォンに換えるわけです。そうなると、外平債に紐づいたドル資産がなくなって、ウォンに換わったので、国税で埋めることになる一般的な「赤字性債務」(国債などが該当する)に変わったという意味です。
これはNABOの指摘するとおり、債務の質が悪くなったことを意味します。
なぜなら、外国為替平衡基金に積まれるお金(外貨)、金融性債務は外貨資産に裏付けされ、為替安定を目的とする比較的リスクの低い債務です。
しかしながら、それを赤字補填に使うことで、単なる赤字国債のような返済リスクの高い債務に変わり、将来的な財政負担が増加するため、債務の質が悪くなったと言えるわけです。
また、外国為替平衡基金は政府が管理する基金のお金なので「国家債務(政府負債)として計上されていません」でした。それをお金がないので債務として認識される形にせざるを得なかった――という言い方もできます。
さらに簡単にいえば、政府が新しい借金をする代わりに保有資産を売却した――と言うこともできます。
何を意味しているかというと「韓国政府のお金のなさ」で、資産を売らないと政府が回らなくなっている――ということです。
NABOは「2024年予算案を見ると、政府は今年も外貨平衡基金から43兆ウォンを使うことが予想される」と予測しています。
恐らくそのとおりになるでしょう。
先に、韓国は政府・企業・家計の全てが借金依存とご紹介しましたが、借金どころか政府は資産売却でしのいでいるというのが本当なのです。
(吉田ハンチング@dcp)