『IMF』の警告と助言。このままいくと韓国の政府債務は180%上昇する!

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2024年10月11日、『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)が面白いワーキングペーパーを出しました。

韓国の年金改革についてです。

タイトルは「Parametric Pension Reform Options in Korea(韓国におけるパラメトリック年金改革の選択肢)」です。

「パラメトリック年金改革」って何?

ちょっとだけ用語の説明が必要でしょう。

「パラメトリック年金改革」というのは、年金制度の中で「既存の制度パラメータ」――例えば、

年金の給付額
年金受給開始年齢
保険料率

なを調整することによって、年金財政を安定させたり、持続可能性を高めたりする改革のことです。

もっと簡単にいうと、年金制度を根本から作り変えるのではなく、「パラメーターだけいじって、なんとかならねえか」という改革のことです。

1.年金給付額の調整:
将来の支給額を引き下げたり、インフレに対する調整を制限する。

2.受給開始年齢の引き上げ:
年金の受給を開始する年齢を引き上げることで、支給期間を短くする。

3.掛け金率の変更:
被保険者や企業が支払う掛け金率を引き上げて、年金の財源を増やす。

4.給付計算方法の見直し:
年金額の計算に使用する賃金水準や算定方式を変更する。

このようなパラメーターを操作することで年金制度をいじるのが「パラメトリックな改革」で、これに対して「もうゼロから制度設計のやり直しだー!」となると、「構造的改革」です。

韓国の場合は、年金制度が維持できるかどうかが不透明と懸念されており、政府が公表するたびに「年金基金が枯渇する時期が前倒しになる――という待ったなし状態です。

これまでの大統領はみんな見て見ぬフリをしてきましたが、もう放置はできません

文在寅政権時に「大丈夫だあ」という公表がありましたが、統計を恣意的に操作した「インチキ予測」であったことが後に発覚しました。こういう点でも文在寅がいかにいい加減な大統領だったかが分かります。文在寅は、「国民(と金正恩)の前でいい格好ができる」なら、中身はウソでもいい――という人だったのです。

ローソク革命だか共産テロだか知りませんけれども、こんな人物を大統領に選んで、何より貴重でしかも取り返しがつかない「時間」を失いました。選んだ韓国人の自業自得です。

尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は正面から取り組む意思を見せてきました。今回の『IMF』のワーキングペーパーは尹政権にとって参考になるでしょう。

このままいくと韓国政府の債務は180%上昇する

なかなか面白いリポートですが、直截に結論部分だけ以下に引用してみます(面倒くさい人は次の小見出しまで飛ばしてください)。

5.結論

本稿では、世代重複一般均衡モデルを用いて、韓国における人口変動下での財政軌道を評価した。

現在の政策およびすでに発表されている政策変更の下では、高齢化による人口構造の影響で、公共年金支出と公的債務の蓄積に大きな圧力がかかると予想される。

経済成長の鈍化も財政圧力をさらに強める要因となる。

高齢化が「公的債務の対GDP比率」に与える影響は、基準値でも非常に大きいと見込まれる。

2070年までに「公的債務の対GDP比率」は、既に立法された年金改革にもかかわらず、約180%上昇すると予測される。

このような債務増加は、1人当たりGDPの深刻な低下を伴う。

留意すべき点として、

この数値は「無政策」の仮定、すなわち人口変動のみを想定し、公共政策や年金政策が50年以上変更されないと仮定した結果であり、

この結果はあくまで参考値で、定型化されたマクロモデルに内在する大きな不確実性に左右される。

「公的債務の対GDP比率」の増加を抑えるために検討された年金政策の手段は、

退職年齢の引き上げ、
年金代替率の引き下げ、
社会保険料の引き上げ、

またはこれらを組み合わせたものである。

各政策手段を単独で実施した場合、「公的債務の対GDP比率」の増加を抑制するには大幅な調整が必要である。

例えば――、

退職年齢を6年引き上げる
所得代替率を半分にする
または社会保険料率を13.8ポイント引き上げる

――ことで、「公的債務の対GDP比率」の増加を大幅に抑えられる。

しかし、これらの政策を単独で実施することは、政治的および社会的な観点から現実的ではないように思われる。

複数のパラメータを小幅に調整する組み合わせの方が、より良い結果が得られる。

正確な政策の組み合わせは、社会的な好みを反映して選ぶべきである。

保険料率や退職年齢の引き上げは韓国をOECD平均に近付けるが、所得代替率の引き下げは給付の適正さに悪影響を与え、基礎年金の増額と組み合わせてのみ考慮すべきである。

改革の選択によっては、社会の一部のグループが他のグループより大きな負担を負うことになるかもしれない。

どのような改革を選択するにしても、改革疲れや改革の後退を避けるために、慎重かつ現実的な設計が必要である。

⇒参照・引用元:『IMF』公式サイト「Parametric Pension Reform Options in Korea」

韓国にとっては非常に厳しい結論です。

作戦名は「無理難題」。それでも着地点を探せ!

そもそも低負担・低福祉でやってきた国なので、人口がこれから急減していくフェーズになり、その「低福祉」ですら提供できるのか?――となっているのです。

結論からいえば「無理難題」。『IMF』が今回のペーパーで示してみせたのは、パラメーターだけいじってなんとかしようとしても、自ずから限界がある――ということです。

まず、このままいけば韓国政府の債務は2070年には現在の「約180%上昇する」という予測が絶望的です。この状態では、すでに対外的に韓国政府の信用が蒸発しているのではないかとさえ思えます。

そのような事態にならないためには、政府債務を抑えることを前提に、年金などの社会保障のためのお金を調達しないといけないのです。

なんという無理難題でしょうか。

政府債務を極端に積み上げるのが嫌なら――と『IMF』が提示してみせたのが、

退職年齢を6年引き上げる
所得代替率を半分にする
または社会保険料率を13.8%ポイント引き上げる

です。

3つとも不可能です。

退職年齢を一気に6年引き上げるなど、国民が暴動を起こすでしょう(笑)。

「所得代替率」というのは、年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの――ですが(日本の厚生労働省の説明より引用)――それを半額にすることなど不可能です。

これまた暴動が起きます。

また、『IMF』が説明しているとおり、給付する意味はあるのか?――と、「給付の妥当性に悪影響を及ぼす」のは間違いありません。

「社会保険料率を13.8%ポイント引き上げる」といったら、やっぱり暴動が起きるでしょう。

というわけで『IMF』は、パラメーターをいじってなんとかしたいなら、ハイロウミックスというか――「複数のパラメーターをより小さく調整する組み合わせ」をオススメしています。

まあ、現実的で暴動の起こらない(笑)パラメーターの組み合わせを探せ――というわけです。

(吉田ハンチング@dcp)

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