日本政府の財政の状況は火の車といわれます。財務省からの「国民一人当たりの借金が○○万円」なんて話が耳にタコができるほど聞かされてきました。
これに対しては、「それは借金だけを見た話であって、日本政府は資産も保有している。借金と資産の両方をつき合わせて見なければならない」という反論が常にありました。
簡単にいえば「年収500万円のお父さんに借金が1,000万円ある」としても「家やクルマや貯金などの資産があって、それが1,000万円分あった」ら、その借金は問題になるのか?というような話です。つまり、企業会計と同じように「バランスシート」で見ないとフェアではない、というわけです。
2018年10月にIMF(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)から「Fiscal Monitor Reports Managing Public Wealth(財政モニターリポート:公的資産の管理)」という興味深いレポートが出ました。
これは、バランスシート的な観点から国家の財政の健全性を見てみようというものです。このリポートの中から負債と資産をグラフ化したものを引用します。
⇒引用元:『IMF』「Fiscal Monitor Reports Managing Public Wealth(Full Report)」P.7
https://www.imf.org/en/Publications/FM/Issues/2018/10/04/fiscal-monitor-october-2018
上掲のとおり、日本は「Liabilities:負債」が対GDP比238%(GDPの2.38倍)もありますが、「Assets:資産」も対GDP比220%(GDPの2.2倍)あります。負債の方が多いので、残念ながら「Net worth:純資産」は赤字ですが、それでもこのグラフを見ると「財務省がやいやい言うほど財政の状況は悪くないのでは?」という気持ちになりますね。
ただし、このリポートをもって「IMFが日本の財政を健全とした」とするのには少し無理があります。リポート自体が「このような見方をすることで有用な対策を講じることができるのでは」という一種の提言のようなもので、リポート内に日本の財政について「健全」と言及があるわけではないのです。
しかし、「消費税率を10%に上げる必要は本当にあったの?」と思わされるリポートであることは確かです。
その一方でIMFは「IMFスタッフのシナリオは、高齢化コストを賄うために、消費税率を2030年までに15%、2050年までに20%まで徐々に上げる必要があることを示唆しています」などという文章を含むリポート※を2019年11月25日に公表しやがるするわけです。
Money1ではIMFのことを「世界を股に掛ける高利貸し」と呼んできましたが、本当に、IMFの言うことを正面から受け止めていたらロクなことにはなりません。むしろ「あんたの言うことは全然聞きません」ぐらいの態度で臨みたいところです。
1997年のアジア通貨危機時に韓国など各国がIMFによってどれだけヒドい目に遭ったか、また「うっせーよ!」と敢然と立ち向かったマレーシアについては別記事でご紹介いたします。
※この読んでるだけで腹が立ってくるリポートは以下のURLで読めます。
⇒参照:『IMF』「Japan: Staff Concluding Statement of the 2019 Article IV Mission」https://www.imf.org/en/News/Articles/2019/11/24/mcs-japan-staff-concluding-statement-of-the-2019-article-iv-mission
(柏ケミカル@dcp)