↑仁川港に停泊するセウォル号。2014年03月27日。PHOTO(C)jinjoo2713(Naver User)
2014年04月16日、韓国で「セウォル号」という旅客船が転覆・沈没するという事件がありました。この船には修学旅行中の高校生が325人も乗船していました(計476人が乗船)。しかし、この事故によって304人の方が亡くなりました(295人死亡、9人行方不明)。
多くの若者が命を落とした、この韓国史に残る悲劇的な事件について、韓国ではいまだに議論がくすぶっています。また、この事件への対応がまずかったとして、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領、政権への支持を大きく下げることとなりました。
水深44mの海底に沈んだセウォル号は、2017年になって引き上げられて木浦新港鉄材埠頭に置かれていますが、韓国政府はこれを永久保存するという計画を立てています。
セウォル号の船体を木浦新港の背後に移動してそこに記憶館を建設するという「セウォル号船体処理計画」で、これは韓国海洋水産部の「セウォル号後続対策推進団」が進めています。この計画には1,500億ウォン(約144億円)が投じられる予定です。
18億ウォンの仕事なのに「3回とも流札」という衝撃
この計画実現の前段階として海洋水産部は、「セウォル号船体処理計画履行事業の基本計画樹立用役務」を公募し、入札を募りました。
要は、セウォル号を現在の場所から移動し、記憶館を建設するための調査を行い、技術的な検討を実施、かかる費用の見積もりも作成してペーパーにまとめる仕事です。
「18億ウォン」(約1.7億円)という、かなり大きな予算を使う仕事なのですが……。
しかし、韓国メディア『毎日経済』によれば、2021年11月09日、12月06日、12月16日と3回も公募入札を行ったのに全回とも流れてしまったというのです。
同紙の記事から一部を以下に引用します。
(前略)
基本計画樹立用の役務費が18億ウォンにもなる大きな事業だが、問題は該当事業の難易度が高いという点だ。工事が行われる木浦新港後背の敷地に対する基礎資料調査、現地与件調査、類似施設事例調査はもちろん、技術計画を立てる際は土木、建築、船体(修理および移動措置)分野に加え、教育および展示コンテンツ、その他の分野まで考慮すべき高難度の役務である。
海洋水産部の関係者は「船体を破損せずに移動させなければならないという、世界で前例のない難しい事業」と説明した。
セウォル号の惨事という社会的に大きな意味を持つ敏感な事案に対する事業であるため、企業が負担を感じて参加できないという声も伝わってきている。
(後略)
誤解しないでいただきたいのですが、入札はあったのです。1つのコンソーシアム(企業の連合体)が応札したのですが、応札が1社しかない場合には、(競争がないので)流札(入札なしとして流してしまう)となったのです。
これが進まないと、政府の構想にある記憶館の建設が進みません。同紙の記事によれば、仕方がないので海洋水産部は業者を指定する方向で動く、とのこと。
記事にもありますが、社会的に大きな事件ですので、企業も二の足を踏んでいるのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)