韓国で大問題と化している「検察から捜査権を完全に剥奪する法案」ですが、2022年04月22日、現政権与党『共に民主党』と最大野党『国民の力』※の妥協が成立しました。
与野党が激突しているので、朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長が「仲裁案」を提示。これに与野党が合意となったのですが――これが最悪の妥協です。
現在、検察庁は以下の6つの重要な犯罪についてのみ捜査権を保持できています。
・経済犯罪
・公職者の犯罪
・選挙犯罪
・防衛事業犯罪
・大型惨事
これを全部剥奪するという方向性は変えず、一時的に「政治腐敗の犯罪」「経済犯罪」のみは残し、「公職者の犯罪」「選挙犯罪」「防衛事業犯罪」「大型惨事」についてはすぐに捜査権をなくす――というのが「仲裁案」の主な内容です。
すぐに剥奪されるものの中に、「公職者の犯罪」の捜査権が入っていることにご注目ください。
文在寅政権関係者への捜査をさせたくないのは明白です。
贈収賄などがあって腐敗に当たる内容なら、公職者を捜査できますが、それ以外は検察が担当できません。
このままでは、例の「ブラックリスト疑惑」も「月城原発の早期廃炉に文在寅大統領の支持があったのではないいかという疑惑」も検察が捜査できないことになります。
すでに取りかかっている「産業通商資源部のブラックリスト疑惑」は、法律が施行されたら猶予期間として設けられる4カ月以内に案件を警察庁に渡さなければなりません。
面白いことに、大統領候補だった李在明(イ・ジェミョン)さんの大庄洞(テジャンドン)疑惑については「経済犯罪」なので検察の捜査権が及ぶのです。
李在明(イ・ジェミョン)さんは文在寅大統領と遺恨があって、『共に民主党』内でも浮いた存在です。李在明(イ・ジェミョン)さんの方はまあいいか――となったのかもしれません。
いずれにせよ、本質的には何も変わらない仲裁案に合意するなどというのは最悪です。このようなプランに合意するのであれば、『国民の力』はなぜそもそも反対したのでしょうか。
仲裁案の内容が明らかになった後、文大統領に慰留されていた金浯洙(キム・オス)検察総長は再び辞職願いを提出。
検察総長に合わせて、全国6つの高等検察庁の検事長、検察の幹部が相次いで辞表を提出して、同法案(そして仲裁案)への反対の意思を示しました。
韓国史上、前代未聞の出来事です。
『国民の力』は『共に民主党』に妥協したことで検察を敵に回したともいいえます。
元検察総長である尹錫悦(ユン・ソギョル)次期大統領はそれでいいのでしょうか?
※『国民の力』は2022年04月18日、安哲秀(アン・チョルス)さんの『国民の党』との合併を果たしました。
(吉田ハンチング@dcp)