韓国は「中国の王毅外相に言ってやった」。中国は「韓国の朴外相に説教したった」

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↑会談に臨む王毅外相(左)と朴振(パク・ジン)外相(右)。

2022年07月07日、G20外相会合をきっかけに、中国王毅外相と韓国朴振(パク・ジン)外交部長官(外相に相当)が会談を行いました。

尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が就任してから初の中国との外相会談です。

尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は親米に舵を切っています。NATO首脳会談にも出席しました。中国からすれば許せないことです。

中国はなんとしても韓国を自陣営側にとどめておかなければなりません。間違ってもロシアのように孤立するわけにはいかないのです(寂しんぼう同士の連帯は一応ありますが)。

ヨーロッパ諸国も脅してきた中国の王毅外相が、どのように朴振(パク・ジン)外交部長官に接するのか非常に注目されていました。

「中国に言うたった」な記事になっています

この中韓外相会談について、韓国メディア『朝鮮日報(日本語版)』は、「中国・王毅外相と初めて会談した朴振外相、『人権と自由』を強調」という記事を出しており、以下のように書いています。

(前略)
会談で朴長官は中国が神経質な反応を示す人権や法治の守護などに何度も言及し、「平等な協力」を強く訴えた。

会談の冒頭、朴長官は蓄積の重要性を説く中国の格言「山積而高沢積而長」を取り上げ、「相互尊重」を基盤に両国関係を築くべきと強調した。

朴長官は「両国が相互尊重と信頼を積み上げ、平等に協力する良い同伴者になれば、30年後の未来においても健全かつ成熟した韓中関係へと発展させることができるだろう」「新政府は自由と平和、人権と法治を守るため国際社会との協力と協調に積極的に参加する」と伝えた。
(後略)

⇒参照・引用元:『朝鮮日報(日本語版)』「中国・王毅外相と初めて会談した朴振外相、『人権と自由』を強調」

「自由と平和、人権と法治を守る」と中国の王毅外相に言った――となっています。

人権と法治は、中国にとっては最も触れてほしくないことなので、もし本当に朴振(パク・ジン)外交部長官が本当に正面切って言ったのだとすれば、大したものです。

つまり『朝鮮日報』の同記事は「中国に堂々と言ってやったぞ」というものなのです。

でも、本当に言ったのでしょうか? 本当に言ったとして、それは効いたのでしょうか?

中国外交部のプレスリリースを見てみよう!

では、中国外交部はこの会談についてどんなプレスリリースを出しているでしょうか。

以下をご覧ください。見どころは最後のブロックです。

王毅国務委員兼外相は、バリ島で開催されたG20外相会議の傍ら、韓国の朴振(パク・ジン)外相と会談した(現地時間07月07日、以下同)。

王毅外相は、中韓両国首脳の電話会談の成功は、二国間関係の円滑な移行と良いスタートをもたらしたと述べた。

今年は中国と韓国の外交関係樹立30周年に当たるが、両国関係は発展のための重要な機会を目の当たりにする一方で、現実的な課題にも直面している。

中国と韓国の良好な関係を維持し、発展させることは双方の共通の利益であり、そうでなければ両国は苦しむことになる。これは、過去30年間の両国関係の継続的発展の成功体験である。

中国と韓国は密接な隣国であり、切っても切り離せないパートナーである。

両国は安全保障環境を共有し、利害が収斂する産業サイクルを形成している。

既に得られているコンセンサスと理解を堅持し、相互の政策の安定性と継続性を維持することが重要である。

中国も韓国も東洋文化圏で、信頼が大切なのだ。 孔子曰く「人にして信なくんば、その可なることを知らざるなり」(自分の言ったことを守らなければ信頼は得られない)。

中国は韓国と協力して、国交樹立の初心を見直し、互恵的な協力に焦点を当て、内外の動揺を取り除き、両国関係の健全で安定した発展の勢いを促進することを希望している。

<<ここまでは中国王毅外相の言葉>>

朴振(パク・ジン)外相は、韓中国交樹立30周年という節目の年を迎えたと述べた。

習近平主席は尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の当選を祝し、対話をし、王岐山副総裁を就任式に出席させた。韓国側は中国が両国の関係を非常に重視していることを感じたと述べた。

大韓民国は、両国関係の発展には相互尊重と信頼が不可欠であると考え、「山は高く、沼は長く」の精神で中国と対等な立場で互恵的に協力し、両国のさまざまな分野での協力でより目に見える成果を上げることを推進する。

<<ここまでは韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官の言葉>>

双方は、接触と深いコミュニケーションを強化することが重要であると考えており、年内に両国の外相が相互に訪問することで原則的に合意した。

双方は、両国間の貿易が着実に増加し、過去最高を更新する見込みであることを肯定的に評価し、より高いレベルの相互開放を実現するために、両国間のFTA交渉の第2段階を加速させることに合意した。

双方は、ハイテク、気候変動、エコロジーと環境保護、クリーンエネルギーの分野で協力を拡大し、安定的かつ円滑なサプライチェーンを確保することに合意した。

双方は、人文科学、特に青少年交流を強化し、両国間の人民間交流を促進し、グリーンチャンネルを有効に活用し、人民間交流を促進するために秩序正しくフライトを再開・増加することに合意した。

また、双方は共通の関心事である地域の安全保障状況について意見交換を行った。

王毅は、一国主義の横行と覇権主義の拡散に直面して、国際社会は全人類の平和、発展、公平、正義、民主、自由という共通の価値を堅持し、真の多国間主義の実践を提唱し、国連を中核とする国際体制と国際法に基づく国際秩序を保護しなければならないと強調した。

現在、特に重要なのは、この地域に冷戦のメンタリティーが戻るのを防ぎ、大国間の対立やブロック政治を持ち込まないようにすることであると述べた。

⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「王毅会见韩国外长朴振」

中国外交部のプレスリリースには、『朝鮮日報(日本語版)』の記事にあるような、朴振(パク・ジン)外交部長官が王毅外相に対して「自由と平和、人権と法治を守る」と何度も言った――なんて話は一切出てきません。

「王毅外相が朴振(パク・ジン)外相を説教した」としか読めない

それどころか、むしろ王毅外相の方が「一国主義の横行と覇権主義の拡散に直面して、全人類の平和、発展、公平、正義、民主、自由という共通の価値を堅持するべき」などと述べたことになっています。

一国主義を横行させ、覇権主義を拡散している」のはロシア中国ではないか、といいたいところです。

一国主義・覇権主義というのは、名指しこそしていませんが、アメリカ合衆国のことです。

しゃあしゃあと「全人類の平和、発展、公平、正義、民主、自由という共通の価値を堅持するべき」としていいるのは、次の「国連を中核とする国際体制と国際法に基づく国際秩序」につながります。

アメリカ合衆国中心主義ではなく、中国が拒否権を有する「国連」を中核とせよ、と言っているのですから、つまりは「合衆国側に行くな、中国の言うことを聞け」――という主張に他なりません。

国際法に基づく国際秩序を保護しなければならない」は、まさに噴飯ものの発言です。

中国のいったいどこが国際法を守っているというのでしょうか。厚顔無恥な態度というのはまさにこのことです。

「冷戦のメンタリティーや大国同士のブロック化をこの地域に持ち込むな」とも言っています。これこそ、まさに韓国に合衆国側に行くなという警告です。

――というわけですので、朴振(パク・ジン)外交部長官が本当に「王毅外相に対して『人権と自由』を何度も言った」のだとしても、中国側には全く効かなかったのです。

この中国側のプレスリリースは、「韓国側に合衆国側に乗るな、と王毅外相が説教した」という内容になっていますので。

もし韓国が合衆国サイドに立つというのであれば、中国は韓国に対して躊躇なく経済制裁を行うのではないでしょうか。

韓国に問われているのは覚悟です。

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(吉田ハンチング@dcp)

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