韓国版のインド-太平洋戦略は「中国を包容する」。韓国はいつまでコウモリなのか

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日本ではあまり報道されていませんが、2022年12月28日、韓国の第20代大統領室は「自由、平和、繁栄のインド-太平洋戦略」最終版を公開しました。

どこかで聞いたようなタイトルです。

韓国は独自に「インド-太平洋戦略」を策定しているのです。安倍晋三首相のコンセプトに端を発するといってもいい「QUAD(クアッド)」に入れそうにないので、コンセプトをパクって踏襲して自由主義陣営の仲間であることをアピールしているのでしょうが……。

以下がそのPDFの目次ページです。

推進の背景:インド太平洋地域の戦略的重要性……04

インド – 太平洋戦略のビジョン、協力の原則および地域的範囲……07
1.私たちのビジョン:自由、平和、繁栄のインド – 太平洋
2.協力原則:包含、信頼、好恵
3. 地域の範囲

重点推進課題……18
1. 規範と規則に基づく人態地域秩序の構築
2. 法治主義と人権増進協力
3. 非拡散・対テロ協力強化
4. 包括安全保障協力の拡大
5. 経済安全保障ネットワークの拡充
6. 先端科学技術分野協力強化及び域内デジタル格差解消寄与
7. 気候変動・エネルギー安全保障関連域内協力主導
8.カスタマイズされた開発協力パートナーシップを促進することによる積極的な貢献外交
9. 相互理解と交流の促進

結論……33

⇒参照・引用元:『韓国 外交部』公式サイト「自由、平和、繁栄のインド – 太平洋戦略」

そもそも安倍元首相が提唱した「自由と繁栄の弧」「自由で開かれたインド太平洋」構想は中国を牽制するために「自由と民主主義・資本主義経済を体現する国々の結束を求めるもの」でした。

そのため、アメリカ合衆国は「いいね!」となり、「インド-太平洋戦略構想」へのパラダイムシフトが起こり、これが「クアッド」にまでつながっています。

端的にいって、「民主集中制」という独裁を許す政治形態を取り、まがいものの資本主義である中国の経済を封じ込めるためのものです。

では、今回最終版になったという韓国のパクった「自由、平和、繁栄のインド-太平洋戦略」の中で、中国についてどう書かれているでしょうか?

韓国は本気で中国を封じ込めるつもりがあるのか?

以下に今回公表されたPDFから中国への言及についての部分を引用してます。

(前略)
가치를 공유하는 역내 국가 간 협력과 연대를 위해 필수적인 요소로서 상호 신뢰 회복과 관계 발전을 위한 외교적 노력을 이어나가고 있다.

인태 지역의 번영과 평화를 달성하는 데 있어 주요 협력 국가인 중국과는 국제규범과 규칙에 입각하여 상호 존중과 호혜를 기반으로 공동 이익을 추구하면서 보다 건강하고 성숙한 한중관계를 구현해 나갈 것이다.
(後略)

価値を共有する域内国家間の協力と連帯に不可欠な要素として、相互信頼回復と関係発展のための外交的努力を続けている。

地域の繁栄と平和を達成する上での主要協力国である中国とは、国際規範と規則に基づいて相互尊重と互恵に基づいて共同利益を追求しながら、より健康で成熟した中韓関係を実現していくだろう。

⇒参照・引用元:『韓国 外交部』公式サイト「自由、平和、繁栄のインド – 太平洋戦略」

「地域の繁栄と平和を達成する上での主要協力国である中国」と書いています。地域の繁栄と平和を達成する上での障害になっているのが中国ではないでしょうか。

韓国は果たして本当に自由主義陣営の側に立って、中国と対峙するつもりがあるのでしょうか。

「韓国は中国共産党を抱擁する」?

この韓国政府の戦略報告書に対して、例えば韓国メディア『毎日経済』は以下のように書いています。

(前略)
報告書によると、韓国政府は米中競争の中で大きな関心を集めた中国と関連して「人態地域の繁栄と平和を達成する上で主要協力国」と定義した。

政府は対中国戦略について「国際規範と規則に基づいて相互尊重と好恵を基盤に共同利益を追求し、より健康で成熟した韓中関係を実現していく」と明らかにした。

合衆国・日本・カナダなどは人態戦略から中国を排除したが、韓国政府は包容する意思を明らかにしたのだ。

⇒参照・引用元:『毎日経済』「韓国版インド・太平洋戦略は『中国を包容する』」

『毎日経済』は「韓国は中国を包容する」と書いています。韓国政府の意思が本当にそうなら、とてもではありませんが合衆国と共には歩めないでしょう。

中国共産党は「韓国版 インド-太平洋戦略」をどう見たか?

面白いことに、当の中国外交部の方は『毎日経済』のような見方を全くしておりません。中国は今回の報告書を懐疑的に見ています。

2022年12月28日の外交部定例ブリーフィングで、王文斌報道官は『聯合ニュース』の記者からの質問に以下のように答えています。

聯合ニュース:
韓国大統領府は本日、「自由、平和、繁栄のためのインド太平洋戦略」の最終版を発表しました。この戦略は、中国を「インド太平洋」地域の繁栄と平和のための主要なパートナーと見なし、国際的なルールと規範に基づく相互尊重と相互主義を強調しています。中国のコメントは?

汪文斌:
中国は韓国からの関連報告に注目しています。

中国は各国の連帯と協力を提唱し、協力して地域の平和、安定、発展、繁栄を促進し、排他的な派閥の形成に反対する。

韓国側が中国と協力して中韓関係の健全で安定した発展を促進し、地域の平和、安定、発展、繁栄の促進に共同で積極的に貢献することを希望する。

⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「2022年12月28日外交部发言人汪文斌主持例行记者会」

王報道官は、今回の韓国政府の報告書について褒めたりしませんでした。また、改めて「排他的な派閥に形成に反対」と述べています。この韓国版のインド-太平洋戦略なるものが合衆国・日本・オーストラリア・インドの関係に重なるものではないだろうな、と懐疑的に見ている証左です。

その上で、「韓国は中国に協力せよ」と述べました。

中国共産党が韓国の動きを懐疑的に見ている補足の証拠として、2022年12月28日、中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』は「Seoul unveils Indo-Pacific Strategy; experts say group confrontation is against South Korea’s interests」(ソウル、インド太平洋戦略を発表。専門家は『集団対立は韓国の利益に反する』と語る)という記事を出しています。

もし、中国共産党が韓国の「(中国は)人態地域の繁栄と平和を達成する上で主要協力国」との言及を評価しているなら、このようなタイトルの記事にはならなかったはずです。

評価どころか「中国のオブザーバーは、ソウルの最大の利益は中国と米国の間でバランスを取ることにあると述べ、陣営対立はソウルの利益に反すると警告した」というリードからも分かるとおり、「あっちに行くんじゃないぞ」と釘を刺しているのです。

では、この戦略報告書を見た合衆国はどう思うでしょうか?

韓国が考える「インド-太平洋戦略」は我々が考えるものとは違う――ではないでしょうか。

(吉田ハンチング@dcp)

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