韓国は老年層の貧困率が高い国といわれます。「老齢年金が十分ではない」というのが原因の一つとされます。ただ、韓国は「低負担・低福祉」でここまでやってきたので、これを急に「高福祉」方向にシフトするのは無理です。
老齢年金について興味深いデータが出ました。
2023年07月11日、あの『マッキンゼー』が「グローバル保障格差研究報告書」を発表したのです。これは、マッキンゼー韓国事務所が、公的・私的年金合わせて老齢年金を国別に比較・分析したもの。
「所得代替率」で見ると、韓国はやはり低い水準の国であることが分かりました。
所得代替率というのは、働いているときの所得の何%を老齢年金がカバーするかという数字です。
日本の厚生労働省では、所得代替率を「年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの」と説明しています(所得代替率は主に厚生年金について使います)。
例えば、現役世代の手取り収入額が50万円だとして、所得代替率が50%であれば「25万円」が給付されるということになります。
マッキンゼーの報告書では、韓国の所得代替率を約47%と推算しています。
他の国はどうかというと……。
フランス:60.2%
ドイツ:55.7%
日本:55.4%
イギリス:49.0%
国によって制度設計も違いますし、一概にはいえないのですが、『OECD』(Organisation for Economic Co-operation and Developmentの略:経済協力開発機構)は、安定した老後のための適正な所得代替率を「65~75%」と勧告します。
この基準からすれば、今回のマッキンゼーの報告は韓国にとっては厳しい現実をつきつけたものといえるでしょう。マッキンゼーの推算によると適正水準より「18~28%」も低いわけですので。
その上で、マッキンゼー韓国事務所は、所得代替率を上げるために「税制特典の拡大による退職年金および個人年金の活性化」が喫緊の課題だ――と指摘しています。
(吉田ハンチング@dcp)