中国広東省汕頭市潮陽区西胪鎮西二社区に「英之園」、通称「大観園」という施設がありました(後述)。
潮汕地域の伝統様式を現代的に再現した建物群が集まったもので、2013年に建設が始まりました。占有面積は57.389亩(ムー:1ムーは666.6667平方メートル)。
北京四合院スタイルの建物4棟、欧風ヴィラ7棟、伝統的な潮汕の古民家(厝/ツォー)5棟、牌坊(門楼)、彫刻入りの梁や装飾、囲い壁、あずまやなどの施設がありました。
「英之園」の所有者は陳英彪さん(およびその一家)で、地元の村民です。
見ようによってはスゴい庭園(?)なのですが、実はこれは共同所有地を無断で占拠、陳さん一家が勝手に建てた未許可の建築群、すなわち「違法建築」だったのです。
よくそんなお金があったな――なのですが、陳家の富を爆発的に増やしたのは、陳さんの3人の息子である陳赐平、陳赐熊さんらが広州・深圳地域で経営する不動産、繊維、投資などの事業で大儲けのおかげ。中国語メディアによれば、陳慈平さんだけで『広東皇帝集団有限公司』を含む22社と関係がある――とのこと。
つまり「英之園」というのは、陳さん一家が勝手に土地を占拠して、勝手に建物を造り、一家でそこに住んでいた――というものだったのです。
「さすが大陸はスケールがでかいなあ」という事案かもしれませんが、当局も放置はできませんでした。
2020年09月、汕頭市自然資源局潮陽分局はこの施設を没収する旨の公告を出したのですが、ことはそう簡単には進展しませんでした。最終的に2024年、汕頭市自然資源局が撤去処分を決定。
2025年05月27日深夜、数十台のショベルカーが現場に入り、28日夜明け前にはショベルカーが破壊作業を開始しました。
――結果、下掲のとおり、「英之園」はすっかり破壊されてしまいました。
確かに違法建築だったかもしれませんが、「映える」とネット上では人気のスポットだったのです。
中国が誇るおから工事による味気ないマンションが建つぐらいなら、「英之園」を残して何か別の用途に使った方が良かったのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)