IMF(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)の定義によれば、「monetary authorities(金融当局)」が管理している「容易に利用可能」な「外貨資産」、となっています。
この「容易に利用可能」という点が問題で、どの程度なら「容易」なのかは、その国の金融当局に判断が委ねられています。ですから、本来であれば「外貨準備高」に計上するべきではないものまで入っている可能性があります。
これを行っていると外貨準備高は「十分あるよう」に見えます。
日本の場合は、外貨準備はほとんど全部といっていいほどアメリカ合衆国公債で、その数字は合衆国財務省が毎月公表している「合衆国公債の主要ホルダーとその金額」と一致しています。ですので、日本の場合には世界第2位の外貨準備は「本当にある」のです。
日本の誠実さ(バカ正直というべきかもしれませんが)はこのような点にも現れているというわけです。
韓国の場合はどうかですが、「本当はない」可能性があります。ウソの金額を公表しているというのではなく、「容易に利用できる」という条件を満たしていないassets(資産)まで計上しているかもしれない――という意味です。
何を行っている可能性があるかというと、IMFの警告する以下のようなことです。
①国内の事業体、また外貨準備管理事業体の海外子会社への貸し付けのために外貨準備を担保に差し出しているんじゃんないだろうな
②高利回りの資産に外貨準備を突っ込んで損失を出してるんじゃないだろうな
③外貨準備は為替差損が発生する可能性がある。将来もうかるだろうという意図で外貨準備でポジションを取って損失を出していないだろうな
④市場利回りの上昇で準備資産を突っ込んだ市場性のある資産に損失を発生させてないだろうな
⑤④の場合、資産の取得原価と時価に差が生じるが、それをきちんと計上しているだろうな
⑥外貨準備の管理スタッフはきちんとしているだろうな。管理スタッフの不手際、悪意ある詐欺行為、マネーロンダリングなどで損失が発生していないだろうな
⑦為替レートの変動による損益はきちんと計算されているだろうな
⑧賃借対照表の外に対外資産・負債はないだろうな
⑨国内銀行または国内銀行の外国支店に貸し出された資金を計上していないだろうな
⑩外国銀行の口座にある資金もきちんと監視して外貨準備高に計上されているだろうな
⇒参照・引用元:『IMF』公式サイト(原文・英語/筆者(バカ)意訳)
※IMFのサイトではもっと上品に書かれています
韓国では、このIMFの警告のうち1997年の「アジア通貨危機時」時に⑨を行っていて「実は公表されていた外貨準備はありませんでした」となったことがグリーンスパンさんによって暴露されています。
また、↓先にご紹介しましたが、『韓国銀行』が「為替レートの変動に応じて発生する評価損益を期間損益と認識すると、当行の収支と外貨準備高に急激な変動を生じさせることになり、独自の会計規定に基づいて貸借対照表項目として処理している」と発言したことが報じられています。
つまり、④⑤⑦をやっていそうです。為替レートの変動による損益をきちんと計上していないなら、外貨準備を突っ込んで運用している株式や債券その他のassetsについてもきちんと計算していない可能性が高まります。
例えば――ずいぶん前にご紹介したことがありますが、『ドイツ銀行』がリーマン危機時に行った「時価評価の否定」です。これは会計上のインチキです。
さらに、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ではないですが、⑨が繰り返されているかもしれません。
ですので、韓国の外貨準備については緊急時に使えるものであるのか、公表されている額面が「外貨準備にふさわしいものを計上した結果」なのか、が大きな疑問です。
もちろん「まっとうに計上されているかどうか」はフタを開けて精査してみないと分かりませんが。
2020年03月、韓国でドルの流動性が枯渇した際に、『韓国銀行』は一も二もなくFED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)と締結したドル流動性スワップ(韓国の言い方では「通貨スワップ」)の利用を行いました。
この時、外貨準備高がいくらだったかというと、
2020年03月末:4,002億ドル
でした。ドル流動性スワップで利用したお金は、大きいとはいえ約200億ドル。本当に外貨準備が4,000億ドルを超えているなら「5%」に過ぎません。
なぜこの200億ドルをFEDから調達する必要があったのか――それは緊急時に利用できる本当の外貨準備が公表されているよりずっと小さいからではないでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)