2020年12月03日、韓国の経団連といわれる『全国経済人連合会』※から「韓国、7年後に日本を超えて世界第5位の輸出国に躍進の見通し」というリポートを発表。
『中央日報』『毎日経済』など、愛国心を発揮した韓国メディアでは、さっそくこのリポートを大きく取り上げています。
この「7年後に日本を抜く」という予測は以下の箇所に表れています。
(前略)
2019年基準で世界5位の輸出国である日本と韓国の輸出額の差は1,637億ドル。世界市場シェアは、韓国が0.7%低い。今後、韓国の輸出が2010年代の成長(’11〜’19年平均1.68%)を維持するだけでも、輸出競争力の弱体化が顕著な日本を追い越し、7年後に世界5位の輸出国になることが予想される。
(後略)
まず、「輸出が2010年代の成長を続けるだけで……」です。成長率年平均「1.68%」をこれからも続けることが可能なのでしょうか?
もう何度繰り返したか分かりませんが、韓国の輸出はすでに縮小してきています。以下をご覧ください。
上掲は2010~2020年の輸出金額の推移です。『韓国銀行』が公表している月次の「国際収支統計」から集計して年次にしました。ただし、2020年は01~09月までの数字ですので注意してください。
2018年に輸出金額「6,263億ドル」を達成した後、2019年には2017年よりも低い数字「5,620億ドル」に縮小しました。
これも何度もご紹介していますが、韓国の統計庁が認めているとおり、韓国の直近の景気の山(最も景気が良かったポイント)は2017年09月。それ以降韓国経済はずっと下り坂なのです。
ですので、今後7年間で成長率年平均「1.68%」を続けるというのはかなりの無理スジです。本年、2020年より人口が自然減少に陥った点もポイントで、「韓国の夏は終わった」と考えるべきではないでしょうか。
「輸出に頼る経済」から脱却すべきです
また、さらに重要なのは、「いつまで輸出に頼って経済を回すつもりなのか?」という点です。これも先にご紹介したことがありますが、韓国の経済収支の黒字は以下のような構造で成立しています。
これは、経常収支の4つの要素「貿易収支(輸出 – 輸入)」「サービス収支」「第1次所得収支」「第2次所得収支」が月平均いくらなのかを表しています(単位は億ドル)。
経常収支が黒字なのは、ご覧のとおり「貿易収支」が大きく黒字になっているためで、これが縮小することは韓国にとって致命的な事態です。
つまり、韓国は輸出が(輸入よりも非常に)大きくないと経済を支えられないのです。
しかし、日本の場合はもはや「貿易収支」に依存しないで黒字な国になっています。具体的には、これまで投資をしてきたリターンにより「第1次所得収支」に莫大な黒字が上がるようになっています。
実際、このコロナ騒動で日本も輸出産業の業績は大きく毀損されました。では、日本の経常収支は赤転したでしょうか?
いいえ。日本国財務省の公表データによれば(2020年11月10日公表が直近最新版)、04月、06月と危ない月はあったものの、2020年も毎月黒字です。
Money1でもご紹介したとおり、韓国は04月に経常収支が赤字転落しました。韓国は輸出に頼らないでも経常収支が黒字になる国にならなければならないのです。
なぜなら、いつまでも輸出品目に競争力があるとは考えられないからです。
↑でご紹介したとおり、韓国メディアでもこの日本の強さをそねむ記事が出たぐらいです。
ですから、今回の「7年後に韓国の輸出金額は日本を抜く」なんて話は、「いつまでそんなことを言っているのか」という、まさに近視眼的な主張といえるのです。
中国やインド、東南アジア諸国などに輸出品目をキャッチアップされたらおしまいな方向に進もうというのですから。これからの韓国経済をどう成立させるのかを考えなければいけないというのに。
※識者によれば『全国経済人連合会』が経団連といわれたのは昔のことで、現在ではかつてのような力はないそうです。
(柏ケミカル@dcp)