韓国メディアには韓国造船業が「受注ラッシュで活況」と書かれることが多いですが、Money1でも何度かご紹介しているとおり、その実、韓国の造船企業は赤字続きで困っています。
『サムスン重工業』は火の車である
韓国の大手造船企業『サムスン重工業』も「困っている」例に漏れません。以下の業績(連結)をご覧ください。
「営業利益」推移
2018年:-4,093億ウォン
2019年:-6,166億ウォン
2020年:-1兆541億ウォン
2021年第1四半期:-5,068億ウォン
2021年第2四半期:-4,379億ウォン⇒参照・引用元:『ChosunBiz』「サムスン重工業」
上掲のとおり「営業利益」「当期純利益」の覧は真っ赤です。正直にいえば「よくこれで会社が存続できてるなぁ」という結果です。
以下は「負債比率」の推移です。負債比率は「負債が自己資本の何倍あるか」を示します。
「営業利益」推移
2018年:111.72%
2019年:159.10%
2020年:247.54%
2021年第1四半期:261.86%
2021年第2四半期:322.3%※データ引用元は同上
韓国メディアはだいだい「負債比率:200%」(負債が自己資本の倍ある)で危ないと判断するようですから、その基準に照らしても「2020年:247.54%」は危ないどころではありません。
おまけに本年第2四半期には「322.3%」(負債が自己資本の3.223倍ある)となっており、さらに借金を重ねているのです。
日本語メディアでも「韓国造船業は活況」などと記事になることがありますが、その内幕はこのような状態なのです。
どこかで聞いたようなコンボ炸裂!
このままではもちそうにありません。そこで『サムスン重工業』はとにかくキャッシュを集める動きに出ています。
「無償減資」を行ってから「有償増資」という、どこかで聞いたようなコンボを決める予定です。
先に『済州(チェジュ)航空』の記事でご紹介したので繰り返しませんが、これはバランスシートの見た目を良くしてからお金を集める(資本増強を行う)という常套手段です。
『サムスン重工業』はすでに無償減資の方は実施していますので、今度は有償増資です。同社は、11月2~3日に新規発行株への投資を募集し、「1兆2,825億ウォン」(約1,206億円)を調達する予定です。
このうち5,000億ウォン(約470億円)を債務返済に充てて、残りの7,825億ウォン(約736億円)を運営資金とするとのこと。
とにかく1年半は耐えねばならぬ
なにせ「ジャックポットで受注ラッシュ」などと喜んでいても、建造するのに2年はかかりますから、その代金が全額回収できるのは最低でも2年先。
つまり、少なくとも1年半(昨年暮れから受注ラッシュと騒いでいますので)は耐え抜かなければならないのです。
それまでにキャッシュショートしたらおしまいです。どこまで有償増資などでしのげるか、薄氷の戦いです。
あと一点。「とにかく受注しないと!」と安価に受注している可能性があり、実際に納品して代金を受け取って「利益が出るのか」も気になるところです。
今回は『サムスン重工業』をご紹介しましたが、韓国の造船企業はどこも似たりよったりです。
(吉田ハンチング@dcp)