2023年07月08日、『The New York Times』にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン(Paul Robin Krugman)先生が面白いコラムを書いています。
「脱ドル化」についてです。
昨今、ドル覇権が揺らいでいる、脱ドル化だ――という言説がはやっています。
特に、中国が自国通貨・人民元の国際化に注力しており、このままいくとドル覇権は危ういのではないかというのが主旨です。
これに対してクルーグマン先生は「何事も永遠には続くことができないから、ドルも永遠に続くことはできない。しかし、脱ドル化は誇大広告に過ぎない」と一蹴しています。
『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)の統計では、過去20年間、グローバルな外国為替取引でドル使用比率は88%前後を維持しています。
ただし、各国の外貨準備においてドルは2000年の71%から2022年には58%に減少しています。
これについて「脱ドル化の表れ」といわれたりしますが、クルーグマン先生は「各国が経済的ショックに備えるため、オーストラリア、カナダドルなど、より小さな通貨への多様化を反映しただけ」と指摘しました。
クルーグマン先生は「母国語でないのに中国語ができる人がどれだけいるか」「中国語が国際取引で主要言語として使われる日が来るか、人民元も中国語と同じだ」と述べています。
より重要な指摘は「中国の資本統制」についてです。
クルーグマン先生は「中国が資本統制を維持することは、人民元が国際通貨になれるという指摘と相反する」とし、「必要に応じて資産を引き出すことができるかどうか分からないのに、誰が(その通貨で)多くの資産を保有することを望むだろうか」と指摘。
また「中国ビジネスのために中国語を学ぶことができるが、外国人をスパイ容疑で逮捕する意思がある国でビジネスをしたいのか」と皮肉たっぷりに述べています。
「良い代替案がない状況なのでドルは支配力を発揮するだろう」という指摘もあり、実にクルーグマン先生らしい一席です。
(吉田ハンチング@dcp)