先にご紹介したとおり、中国の輸出が失速しており、「貿易での儲けが減ってくるのではあるまいな」と中国も焦り始めたご様子。
EUは、笑顔を見せながら中国への圧迫を強めており、こういうところが歪んだ(ひねくれた)文化圏・欧州各国のうまいところです。
しかし中国側はお金がありませんので、EUが中国から離れていくのは困るのです。特に対EU貿易での大きな黒字が縮小することは、中国にとっては死活問題なのです。
以下の記事でご紹介しましたが、中国が最も黒字を出しているのは「対アメリカ合衆国貿易」ですが、第2位は対EUです(2023年01~07月累計で1,363.7億ドル/香港を除きます)。
そのEUが、対中国貿易の赤字が大きすぎると文句を言い出したのです。これは、中国にとって困った事態です。ただでさえ経済が傾いてきているのに、仮にEUが中国からの輸入規制に乗り出したりしたら……ますますお金が入ってこないことになります。
面白いことに、中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』がさっそくEUに対する牽制球の記事を出しました。
以下に同記事から一部を引用します。
(前略)
中国外務省の報道官は火曜日、二国間の貿易問題について改めて説明し、中国はEUとの貿易黒字を意図的に求めたことはないと述べた。この発言は、09月に開催されるハイレベル会合で、ブリュッセル(EU:引用者注)が北京に対し、欧州の輸出に対する障壁を減らすよう圧力をかけるかどうかというメディアの質問に答えたものである。
欧州委員会のバルディス・ドンブロフスキス副委員長兼通商担当委員は最近のメディアインタビューで、「中国とEUの貿易関係は非常にアンバランスだ。中国は莫大な貿易黒字を出しており、中国側の開放度とEU側の開放度は同じではない」と述べた。
長年にわたり、中国に進出しているEU企業の大半は、二国間貿易から莫大な利益を得てきた。
「近年のEUによるハイテク製品の対中輸出規制は、EUが対中輸出の可能性を引き出すことを直接的に制限し、貿易不均衡をもたらした。EUが本当にこの問題に取り組みたいのであれば、中国に責任を押し付けるのではなく、中国に対する輸出規制を解除する必要がある」と同報道官は指摘した。
専門家によれば、いわゆる貿易不均衡は古い主張であり、市場参入の拡大を求める中国を標的にしたEUの「カード」としてしばしば持ち出されてきたという。
(中略)
国際市場におけるEU製品の競争力低下、特に中国のような高度に国際化された市場では、EU製品の多くは中国製品との競争に苦戦している。
「遺憾なことに、いわゆる貿易不均衡は事実上、欧州のカードとなっており、中国に圧力をかけるために、特に中国での市場アクセスの拡大を要求するためのテコとして利用されている」と崔氏は述べた。
(後略)
「対中国貿易の不均衡について文句を言うこと」がEUにとってもカードになっていると認めています。
しかし、「文句を言うな」「自らを省みろ」というのが中国の反論です。「EUは中国の貿易黒字に文句を言うな」というわけです。
この主張に対してEUがどのような態度を取るのか要注目です。
(吉田ハンチング@dcp)