2023年09月14日、韓国の産業通商資源部が「2023年08月の情報通信産業(ICT)輸出入動向」を公表しました。
同部は、毎月、自動車産業の動向と併せてこのリポートを出しています。これは、韓国にとってICT・自動車産業の製品が輸出に重要であるためです。
しかしながら、読者の皆さまもご存じのとおり、ICT産業の製品については、低迷を続けています。以下が今回発表されたICT輸出のデータです。
ご注目いただきたいのは、オレンジ色の折れ線グラフです。
対前年同期比の増減を示していますが、このグラフの期間だけでも対前年同期比でプラスになった月はありません(△はマイナスの意味です)。
2023年の04月の「-32.2%」を天底に回復しているとはいえ、1年以上(15カ月連続)も対前年同月割れを続けているのです。
ICT産業製品の輸出実績・対前年同月比の増減を個別に見ると以下のようになります。
○半導体:86.4億ドル(-21.1%)○ディスプレー:21.3億ドル(+1.8%)
○携帯電話:9.9億ドル(-12.2%)
○コンピューター・周辺機器:6.6億ドル(-47.4%)
⇒SSD:3.6億ドル(-63.3%)
○通信装備:2.1億ドル(-9.5%)
※( )内は対前年同期比の増減
当月は、ディスプレーだけがかろうじて対前年同月比でプラスになりました。実に15カ月ぶりのことです。OLEDが回復を牽引しました。
特に韓国企業が携帯電話の生産基地を置いているベトナムへの輸出が増加したこと(13.5億ドル/+22.3%)が奏功したのです。
しかし残念ながら、他の製品輸出は全て対前年同月比割れです。特に注目したいのは、回復が望まれる半導体で、まだ減少を継続しています。
⇒システム半導体:39.7億ドル(-14.9%)
⇒メモリー半導体:42.5億ドル(-26.1%)
韓国の場合には「半導体強国」なんていっていますが、それはメモリー半導体に限った話。以下のようにメモリー半導体の価格が下落を継続している間は回復しません。
2022年07月:2.88ドル
2022年10月:2.21ドル
2023年01月:1.81ドル
2023年04月:1.45ドル
2023年08月:1.30ドル
ICT産業製品の国・地域別輸出がどうなっているのかを見てみましょう。2023年08月は以下の結果です。
輸出金額 | 対前年同月比の増減 | |
中国 | 65.5億ドル | -20.6% |
アメリカ合衆国 | 16.5億ドル | -29.5% |
EU | 8.4億ドル | -20.0% |
日本 | 3.8億ドル | +13.0% |
対日本輸出はプラスになっていますが、他は駄目です。特に最も回復が期待されている対中国輸出は「-20.6%」と奮いません。
対アメリカ合衆国輸出も駄目ですが、面白いのは携帯電話。
合衆国への携帯電話の輸出は「0.8億ドル/+34.5%」となっています。
金額が小さいためもありますけれども、対前年同月の伸びだけは34.5%と派手です。同じような傾向が出ているのは、実は日本。
対日本の携帯電話輸出は「0.7億ドル/+331.1%」となっています。
にわかには信じがたいですが、2023年08月は、韓国から日本への携帯電話の輸出が対前年同月比で4.3311倍に増えたのです。
真逆なのは、対EUの携帯電話輸出です。2023年08月は「0.3億ドル/-60.0%」という結果。
対EUの携帯電話輸出はなんと対前年同月比で60%も減少しています。
もっとも「0.3億ドル」とボリュームが小さいので大勢には影響していません。上掲のとおり、対EUのICT製品輸出は「-20.0%」です。
総じていえば、韓国が誇るICT製品の輸出は「どこまで続くぬかるみぞ」状態に陥っています。
(吉田ハンチング@dcp)