Elbridge A. Colby(エルブリッジ・A・コルビー)さんは、アメリカ合衆国・トランプ第2期政権下で国防総省政策担当国防次官(Under Secretary of Defense for Policy)に任命されました。
コルビーさんの2021年の著書『The Strategy of Denial: American Defense in an Age of Great Power Conflict(拒否の戦略)』は、現トランプ政権の安全保障政策を見る上で大変参考になります。
コルビーさんが同書内で「日本」についてどのように書いているのか――を以下に引いてみます(日本語版)。
日本
日本の役割は極めて重要である。
世界第三、四位の経済大国であり、技術開発の最先端にいる。
しかし、比較的わずかしか防衛費を投じていない。
まだ生かされていない日本の莫大な軍事的潜在力と、米国の防衛圏に沿った地理的位置を踏まえると、日本が防衛努力を高めることは文字通り死活的に重要である。
反覇権連合内における米国の防衛圏の前線としての第一列島線沿いの一ゆえに、日本の最も重要な任務は、米国に加え、おそらくはオーストラリアなどの諸国とともに日本自身を確実に防衛することである。
中国の軍事的脅威の規模と高度化を考えると、米国との統合的な態勢をもって、いまや日本は自国の防衛ですべての役割を担う必要があろう。
これにより、日本に必要とされているのは、徹底的な非軍事化と米国への不平等な依存を含む、戦後の防衛モデルからの大転換である。
だが、日本経済の規模に加え、米国の防衛圏にもっとも重圧のかかるシナリオから近い位置を考えると、日本の南方で直近にある台湾の有効な防衛を行う上で、米国を支援する準備に一定の労力を割けるかもしれない。
これは、アジアにおける米国の同盟システムの効果的な維持に根本的に依存する日本にとって一般的に有用であるだけではなく、直接的な軍事的影響もある。
もし中国が台湾を整復できれば、第1列島線を突破する自由な通路を獲得し、中国の軍事行動に対する日本の脆弱性を大きく高めることにつながるだろう。
同じような理由で、米国によるフィリピン防衛の支援についても日本は計画できるが、フィリピンはさらに離れているため、その貢献は弱まる可能性が高い。
さらに、日本はこのような努力の拡大が可能である。
日本はその莫大なGDPの約一パーセントしか防衛費に使っていない。これは米国や中国よりかなり低いだけではなく、中国の軍事力拡大に深刻な脅威を受けているという日本自身の認識から常識的に期待される支出を大きく下回っている。
それゆえ、自国やより広く連合を防衛するうえで日本の貢献が拡大する莫大な余地があろう。
⇒参照・引用元:『拒否戦略 中国覇権阻止への米国の防衛戦略』著:エルブリッジ・A・コルビー,翻訳:塚本勝也/押手順一,株式会社日経BP,2023年12月22日 1版1刷,pp390-391

↑コルビーさんの『拒否戦略』。面白い本ですし、第2期トランプ政権が今何をやってるのかを理解するのに役に立ちます。一応筆者も読んでいます。
コルビーさんの「拒否戦略」は合衆国からすると――という話であって、自国にご都合の良い話をつらつらと並べていらっしゃる――と読んでいてムカムカする箇所もあります。
ただ、合衆国のトランプ政権が現在行っていることというのは、著作の線に沿ったものと見られますし、「日本に必要とされているのは、徹底的な非軍事化と米国への不平等な依存を含む、戦後の防衛モデルからの大転換」という認識に他なりません。
また「日本の貢献が拡大する莫大な余地がある」とも考えいることは確かです。
日本はこのような合衆国に対してどのように対応するのか――です。
ウォーゲームプレーヤーなら誰でも理解していることですが、状況というのは全てが相対的なものです。
コルビーさんは自身を「学者ではない」とし「リアリスト(現実主義者)」と自称していますが、「あんたの思うとおり同盟国(とやらが)動くとは限らないよ」という点は押さえて置かなければならないでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)






