2020年06月11日、『サムスン電子』の役員だった人物が、中国企業『ESWIN』に引き抜かれたことが韓国メディアで報道されました。
引き抜いたのは辣腕で知られる王東升会長
『ESWIN』は液晶ディスプレー用チップなどの半導体・シリコンウェハの製造を手掛ける企業で、2016年に設立されたばかりですが、同社の王東升会長は立志伝中の人物。
中国企業『BOEテクノロジー』を率いて世界最大のLCDパネルメーカーに成長させた手腕で知られているのです。
今回、王会長に引き抜かれたのは『中国サムスン』の社長を務めた張元基(チャン・ウォンギ)さん。新たに設立された『イーシーウェイテクノロジーグループ有限会社』の副会長としてです。
『ESWIN』公式サイトの2020年02月28日のニュースリリース冒頭には以下のようにあります。
2020年2月28日,北京奕斯伟科技集团有限公司在北京创立,成立第一届董事会,选举王东升先生出任董事长,张元基先生为副董事长。
(後略)2020年2月28日、北京に『イーシーウェイテクノロジーグループ有限会社』が設立され、初の取締役会が開催された。その場で王東升氏が会長に、張元基氏が副会長に選任された。
⇒参照・引用元:『ESWIN』公式サイト「北京奕斯伟科技集团有限公司创立布局半导体产业」(原文・中国語/筆者(バカ)意訳)
実際には中国企業の副会長に選出されてから3カ月以上過ぎています。後になって気付いて今回の報道になったわけです。
張さんが仕事を受けるに当たって出した条件とは?
韓国メディアが心配しているのは、『サムスン電子』の技術が同社に流れはしないかという点です。
2020年06月12日、『ChosunBiz』は中国企業の幹部となる張さんに直撃インタビューを行った記事を出しています。同記事内で張さんは以下のように答えています。
「仕事をする上で私が掲げた条件があります。
サムスンと競合することはしない。
(サムスンの)後輩たちに迷惑かけるのはしない。
合法的な事業以外はしない。
月に1~2週間働く(原文のカッコ内割愛:筆者注)。しかし、全て問題ないということでしたので受け入れました。
グローバル経営と戦略策定ぐらいの仕事でしょう。
サムスンに比べれば系列会社が製造しているシステム半導体はエンドレベルであり、この会社が成長すると、サムスンの委託生産を受けることができ、サムスンに必要な部品を供給することもできる。
ですから、かえってサムスンの顧客になります。ベンダー(サプライヤー)になり得ます。中国を見るときには、競争・協力して、リスク・チャンスのバランスを持つことが重要だと思います」
⇒参照・引用元:『ChosunBiz』「【単独インタビュー】中企業に前サムスン電子社長『技術流出? サムスンと競合することはないことを条件に受け入れた』」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
というわけで、張さんは『ESWIN』、新設された会社は『サムスン電子』のライバル企業ではないと考えているようです。他にも大変に興味深い点があるインタビューですので、もし気になったらぜひ『ChosunBiz』の元記事に当たってみてください。
先にMoney1でご紹介したように、中国企業による韓国の人材のヘッドハンティングは今も続いており(随分減少した)、使い捨てにされて嫌な思いをする人も少なくないとのこと。
張さんがそのような目に遭わないといいのですが。
(柏ケミカル@dcp)