2022年05月10日、韓国に新しい尹錫悦(ユン・ソギョル)政権が誕生します。日韓関係が好転するのか注目されていますが、尹政権の外交上のキーマンになる人物が興味深い発言をしていますのでご紹介します。
朴振とはどんな人物か?
キーマンというのは、『国民の力』の朴振(パク・ジン)議員です。
この人は、去る大統領選挙にも出馬していたのですが、『国民の力』の予備選挙で第1次カットオフにかかって候補から脱落しました。
しかし、2022年03月27日、朴議員は尹次期大統領から「米韓政策協議団」の団長を任ぜられ、尹政権の外交の基調を担う人物と目されています。
朴さんは、ひと言でいえばエリート議員。親は内科医の裕福な家庭に生まれ、KSライン(京畿高校-ソウル大学法科に進むエリートコース)を直進した人です。
1979年大学卒業後には外務省事務官として1年間勤務。1980年から1983年まで海軍士官候補生課程を経て海軍将校に服務しています。その後、1983年に国費留学生7期に選ばれて、『ハーバード大学』ケネディスクールで行政学修士学位、ニューヨーク大学 ロスクールで法学LL.M.課程を経て、『オックスフォード大学』セントアントニーズカレッジで政治学博士学位も取得。
嫌味なほどのエリートコースまっしぐらですが、外交通商統一委員長時代の2007年に訪米して同時外交委員長だったバイデン現大統領と米韓の懸案事項について対話したことがあります。
今回の「米韓政策協議団」団長指名は、このような経歴を買われてのことと思われます。
「内乱」にならいないといいですね
尹政権は親米政権になると思われますが、当然合衆国と安保などを強化しようとすれば、合衆国から「日本と仲良くしろ」といわれます。
これまで文政権は「日本のせいで仲良くできないので日韓関係はうまくいかない」「だから日米韓もうまくいかない」と合衆国に言い訳してきました。しかし、オバマ政権の副大統領であったバイデン大統領は韓国のやり口を熟知しています。
ですので、バイデン政権が誕生以降、合衆国は韓国の言い分をほぼはねつけ、冷遇してきました。
尹次期政権は、少なくとも今のところ親米へと舵を取る気ですので、文大統領が失った信頼を取り戻さなければなりません。そのためにも朴議員が団長として合衆国へ行くのです。
2022年04月02日、『米韓同盟財団』ニュースレーター04月号に朴議員の言葉が掲載されています。
2022年03月18日に開催された次期尹政権の「外交安全保障構想関連懇談会」(非公開)で次のように発言したとのこと。
「『戦略的曖昧』という姿勢は同盟の信頼を損なう。中国を正確に見て、冷徹に実理的に判断しなければならない」
「次期政府は国益、アイデンティティ、生存権を守り、言うことを言う堂々とした外交を追求するだろう」
「世界で最も成功した同盟である米韓同盟をさらに頑丈で強力な同盟に発展させる」
「自由民主主義、市場経済、法治、人権の核心価値を共有する同盟を正常化する」
「『戦略的曖昧』という姿勢は同盟の信頼を損なう。中国を正確に見て……」というのは、米中間でのコウモリ外交をやめるという意味のようです。つまり、これまでの文政権の外交姿勢の完全否定です。
米韓が世界で最も成功した同盟かどうかは分かりませんが、「市場経済、法治、人権の核心価値を共有する同盟を正常化する」と勇ましく述べています。
果たしてこれが本当に実現できるかどうかです。
合衆国も韓国を疑いの目で見ていますから、韓国が明確に合衆国側に立って行動して見せないと信用しないでしょう。
「姿勢さえ表明すれば合衆国が優しく迎えてくれる」などと考えているとしたら大きな間違いです。ロシアがウクライナに侵攻したこともあり、合衆国はもはや行動する者しか味方と見なくなっています。
また、これは完全に中国に敵対する発言です。実際に実行に移したら韓国は中国から猛烈な制裁を受けるでしょう。果たして、そのとき韓国は日和らないでいられるでしょうか。
何度もご紹介しているとおり、韓国の次期政権に問われるのは「覚悟」です。本当に自由主義陣営国として中国(あるいはロシア)と対峙する覚悟があるのか、です。
また、文政権の支持率がいまだに40%前後もある国で本当に言うとおりに実行できるのか、という疑問があります。
先にご紹介したとおり、韓国ではこれから戦いが始まるのです。
朴議員の「日韓関係はリセットする」発言
朴議員は日韓関係については「リセットする」と発言しています。これがどういう意味なのかは書かれていません。
尹錫悦(ユン・ソギョル)さんは「日韓関係を好転させる」と述べましたが、好転させるためには「国際法に準拠しない韓国大法院の判決がおかしいこと」「日韓基本法の破棄まで目論んだ韓国政府の外交姿勢が誤りだったこと」「慰安婦合意を一方的に破棄した誤り」を全部認めなければなりません。
それを行うことは、明らかに韓国世論に反することになります。
具体的な「リセット」の内容について述べると「親日派」「土着倭寇」などのレッテルを貼られてしまうので、述べなかった可能性はあります。
あるいは、本当に日韓基本法を破棄してリセットするのでしょうか。
もしそうなら、日本との関係を好転させるどころではなく、決定的な破断界を迎えます。さすがに合衆国も止めるので、合衆国との関係が良くなるとは思えません。そのため、この「リセット」は「日韓基本法の破棄」を指してはいないでしょう。
日本が注意しなければならないのは、「外交というのは姿勢を見せるだけでもポイントが稼げるジャンル」だということです。
悪いことに脇の甘い岸田首相ですので、韓国の姿勢表明だけにころっとだまされる可能性があります。
日本は、韓国が原理原則に基づいた、法治国家にふさわしい行動を起こすまで、韓国に甘い顔をするべきではありません。
(吉田ハンチング@dcp)