韓国は「低負担・低福祉」でここまできたのですが、これ以上システムは維持できません※。
人口が自然減少フェーズに入り、合計特殊出生率が「0.78」という世界最低に落ち込みました。世界最速で老いていく韓国は、健康保険、老齢年金の社会的セーフティーネットの仕組みを作りかえる必要があります。
例えば、国民年金です。
Money1でもご紹介したことがありますが、2023年01月28日、韓国政府が出した「第5次国民年金財政推計結果」によれば、
現行の保険料率(月所得の9%)と給与所得代替率(2028年まで40%)が維持されると、
・2041年から保険料収入・基金投資収益などの総収入より支出が大きくなる
(2041年に年金の財政収支が赤字になる)
・2055年には基金が完全に底をつく
なにせ人口減少に拍車がかかることが見えているので、このシミュレーションでも甘いかもしれないのですが、ともかくこれまでのシステムを維持するのは無理です。
『国会予算政策処』はさらに衝撃的なデータを出しています。
同処の財政報告書によれば、8大保険(以下参照)の赤字を補てんするために、韓国政府が支出する金額が、2023年にはついに「20兆ウォン」を超える――というのです。
4大年金
・国民年金
・公務員年金
・軍人年金
・私学年金
・健康保険
・雇用保険
・労災保険
・老人長期療養保険
上記の8大保険は、社会的なセーフティーネットです。これらが維持できなければ、健康で文化的な最低限度の生活は維持できないでしょう。
これら8大保険に対する政府の赤字補てん額の推移を見ると以下のようになります。
2018年は「11.6兆ウォン」(正確には11兆5,815億ウォン)で済んでいたものが、2023年には「20.1兆ウォン」(正確には20兆723億ウォン)と約1.7倍となっています。
政府が最大の赤字補てんを行っているのは健康保険です。
2023年の赤字補填金は10兆9,702億ウォン。20.1兆ウォンの半分以上を占めています。
2018年は「7兆802億ウォン」でしたら、驚くなかれ「3兆8,900億ウォン」、54.9%も増えたのです。
これは完全に前文在寅政権が行った「文在寅ケア」のせいです。
窓口負担を日本並の30%に下げ、その代わりMRI検査が社会保険適用などの施策を行ったのですが、やたらにMRI検査が増加するなどの弊害が起こり、結局、赤字補てん額が爆増しました。
また、老人長期療養保険についてもどんどん赤字補てん額が増加しています。
同保険に対する赤字補てん額は、「2018年:7,107億ウォン」から「2023年:1兆9,916億ウォン」と1兆2,809億ウォン、180.2%も増加しました。
ほぼ3倍になったといっても過言ではありません。
2兆2,806億ウォン ⇒ 5兆2,772億ウォン
(2兆9,966億ウォン/141.4%増加)
軍人年金
1兆5,100億ウォン ⇒ 1兆8,333億ウォン
(3,233億ウォン/21.4%増加)
このままでは政府の財政負担は増すばかりです。少子高齢化が急速な進行とアンポンタンな文在寅大統領が行った施策は韓国政府の財政を危うくさせています。
しかし、あまりにも事態の進行が速く、政府が後手後手に回っているのが現状です。
※ただし「財源をどうするんだ」という現在の考えでは維持できない、という話です。
(吉田ハンチング@dcp)