韓国の半導体メーカー最大手の一つ『SKハイニックス』の中国工場の件です。
アメリカ合衆国と中国の対立が深まり、高い技術を用いた半導体を中国に供給するのも、中国で製造するのも禁止となりました。製造するための最新製造装置、特に最重要の露光装置を中国に持ち込むことができません。
『SKハイニックス』にとっては生き死にが掛かった大問題です。
Money1でもしつこくご紹介してきたとおり、合衆国と中国の対立がヒートアップしていくのを尻目に「大丈夫だろう」と無錫工場のラインを新しく更新、インテルの中国工場を購入するという愚かな経営判断をしました。
メンテナンスができなければ、いかな最新のファウンドリーであろうといずれは稼働できなくなります。
一部の識者からは「『SKハイニックス』の半導体はもう詰んだでしょう」という指摘も出たのですが、『SKグループ』の総帥である崔泰源(チェ・テウォン)会長は「中国市場を諦めたら、われわれには回復力がない」と明言しています。
中国に造ったファウンドリーをなんとか稼働し続けないといけないのです。
「どうするつもりなんだろう?」だったのですが、韓国メディア『ソウル経済』に興味深い記事が出ました。注目部分を以下に引用します。
(前略)
これまで『SKハイニックス』は、無錫工場を10nm級の第4世代DRAM以上の工程に転換することが容易ではなかった。アメリカ合衆国の対中EUV規制のためだ。
合衆国は2019年から、中国現地に先端半導体工程のための必須装備である『ASML』のEUV露光装置の搬入を禁止した。中国政府の「半導体崛起」の動きを圧迫するためだ。
『SKハイニックス』はこの規制に少なからず影響を受けた。
同社は10nm級第4世代DRAM生産からEUV工程を適用したが、無錫にはEUV露光機を持ち込むことができず、通常の方法ではこのDRAMを生産できない状況に直面した。
もちろん、『SKハイニックス』は昨年、合衆国政府の「検証済みエンドユーザー(VEU)」指定により、中国工場にも18nm以下のDRAM製造用装備を持ち込むことができるようになった。しかし、このような措置でもEUV装置の搬入は許可されなかった。
そのため、『SKハイニックス』は工程転換を決定した。選択した方法は「輸送」だ。
無錫工場のラインで第4世代DRAM工程の一部を進め、このウエハを本社のある(韓国にある:引用者注)利川キャンパスに持ち込み、EUV工程を行った後、再び無錫に送って製造を終える方式だ。
第4世代製品には1つのDRAM層のみにEUV工程を適用するため、コスト増加を許容できるレベルだと判断したようだ。
(後略)⇒参照・引用元:『ソウル経済』「SK하이닉스, 美-中 갈등 뚫고 우시 공장 ‘업그레이드’ 나선다 [biz-플러스]」
「少なからず影響を受けた」と強がった書き方をしていますが、「甚大な影響を受けた」が正しいでしょう。
オランダ『ASML』の最新露光装置が中国に持ち込めないので――中国の無錫工場でつくったウエハを、いったん露光装置がある韓国の利川工場に持ち込んで加工、それを再度無錫工場に送って製品にする――というのです。
「はしが渡れないなら真ん中を通ればいいんですよ」みたいな話で、本当にそんなことができるのか(採算が合うのか)――なのですが、「同社は2013年の無錫工場火災当時、このような方法でDRAM生産中断問題を克服した経験がある」のだそうです。
こちらもお手並み拝見です。うまくいくといいですね。
(吉田ハンチング@dcp)